第40話 ママ vs 桜井シンジ
私達は茂みから、そっと様子を覗くと、神社前では制服姿のママとシンジが会話をしていた。
「リコ、時空院みたいなオタクと付き合っても良いことないぜ。俺に乗り換えた方がいいぞ」
「それはアタシが決める事だよ。それよりも、お前さぁ、ハルミやレイカにも告白していただろ? お前に付きまとわれて、みんな迷惑しているって聞いたぞ」
「……!」
シンジの顔色がみるみると変わっていく。
それから、ママはバッグを地面に叩きつけた。
「もう、部活も引退して責任もないからさ、ぶっちゃけるけどさ……。シンジみたいなナンパヤローは大嫌いだから、いつかは殴ってやろうと思っていたよ」
「なんだ、バレてたのか?」
「ああ、裏表があるのは噂で聞いていたよ。そろそろ、本音を話せよ」
わお、ママって男らしくてカッコいい。
すると、シンジも観念したのか本音をぶちまけてきた。
「まったく、これだから体育会の女は可愛くないぜ。海で不良を絡ませたのも、全部俺の計画だったのさ。バカだから、気づかなかっただろ?」
「まあ、ちょっと怪しいとは思っていたよ。だって、タイミング良すぎでしょ?」
「ふっ、確かにな。あとさぁ、ソフト部に戻るときに、グランドで号泣していただろ? あれ最高に笑えたぞ」
クソ、ママがどんな気持ちでソフト部に戻ったか、何も知らないくせに……。
しかし、ママは挑発に熱くなることなく、シンジに皮肉を言った。
「お前も花火大会で振られた顔も面白かったよ。仲間も本音は笑っていたぞ」
「てめー、舐めやがって……。絶対に殺す」
ママは地面のバッグを拾って、シンジに向かって投げつけた。すると、シンジの視野は一瞬遮られたが、すぐにバッグを手で払いのけた。
ママはそのスキを狙って走り出して、シンジの右頬にパンチを食らわした。
「このクソヤロー」
「くっ、痛っ……」
シンジはそう言葉を漏らして、片手で殴られた頬を抑えた。
それから、ママは大ジャンプをして、シンジに飛び蹴りを食らわした。ママの右足の底がシンジの胸のあたりにめり込み、そのまま背中から地面へ倒れたのであった。
ママは得意気に笑った。
「どうだ、アタシは小学校の頃は男子より強かったんだよ」
シンジは地べたに座りながら、ママを敵意の目で睨んでいた。
「くそ、このアマ……」
「おい、シンジ早く立てよ」
一見すると、ママが優勢に思われたが、シンジはあまりダメージを受けておらす、簡単に立ち上がってきた。
「クソ、女のくせに飛び蹴りなんかしやがって、次はこっちから行くぜ」
シンジはママの顔に向かって、手に握っていた砂を投げたのであった。
すると、ママの視界は暗闇に包まれた。
「くっ、目が……」
どうやら、目が砂に入って痒いのか、両手で目のゴミを取り除こうとしていた。そのスキにシンジは右足でママの腹を蹴り上げた。
ママの身体は一瞬浮いたように見えて、すぐに呻き声と同時に胃液を地面に吐いた。
「ごっは……」
「ハハハ、サッカー部のキックは痛いだろ?」
「きっ、き……。効か、効かねえよ」
ママはなんとか立とうするが、膝がガクガクしており、すぐに地面に四つん這いの形になった。そして、動きが完全に止まった。
ママは女子の中だったら、学校で喧嘩が一番強いかもしれない。しかし、食らったのはサッカー部エースのキックだから、男子でも喰らったらタダではすまないだろう。
シンジは勝ち誇ったようにママを見下ろす。
「あれれ? リコちゃん弱いね。女子だから何でも許されると思うなよ?」
「まっ、まだ……。まっ、終わってない」
ママは強がっているが、ダメージがかなりありそうで、これから形勢逆転出来そうもない。シンジがママの背中を踏もうと右足を上げた瞬間のことだった。




