第39話 カイト vs 桜井シンジ集団
カイトはこちらを見てニッコリと笑った。
「よう、トキコもテッペイも非力だな。やっぱり、親子だなあ。ガハハハ……」
手首を握り締められている坊主男がうめき声をあげた。
「くっ、離せよ……。おっ、折れる、マジ折れるって……」
坊主男はかなり痛そうな感じで、しだいに顔が苦痛に歪んでいく。
それよりも、カイトが何故ここにいるのか? もう、上京したはずなのに……。
私は唖然とした表情で質問した。
「どうして、ここにいるの?」
「お前らが心配になったのさ。まあ、本当は女に振られたから、ストレス解消に来ただけだ。それに地元で暴れるのは今日が最後だし、派手に行くぜ」
おそらく、女に振られたって言い訳は照れ隠しであり、やっぱり妹のママが心配なのだ。
そして、カイトは坊主男の手首を離すと、ニヤニヤと笑みを浮かべた。
「中坊、お前から攻撃していいぞ。ハンデだよ」
「なっ、舐めやがって、オッサン後悔するぜ」
そう叫んで、坊主男は腕を大きく振りかざして、カイトの腹筋にパンチを打ち込んだ。
しかし、カイトはビクトともせず、逆に坊主男が手首を抑えながら痛がっていた。
「くっ、痛ってえ……。何だ? 固っ、コイツ冷蔵庫かよ」
どうやら、カイトの腹筋は冷蔵庫みたいに固いらしい。
まあ、私は海水浴に行った時にムキムキボディを見たから分かる。だけど、着痩せするタイプなので、坊主男には分からなかったのだろう。
カイトはドヤ顔で腕を振り上げた。
「あのな、パンチはこう打つんだよ。行くぜ」
「ちょ、ちょっと待て……。手首が……」
カイトは坊主男の言葉を最後まで聞くこともせず、みぞおちにパンチを打ち込んだ。
「うごぉ……」
坊主男の体が九の字に曲がって、口からは大量の涎を吐き出し、そのまま地面に倒れこんだ。
たった1発のパンチで、坊主男がピクリとも動かない。おいおい、カイトは喧嘩が強すぎだろ。まるで不良漫画の主人公みたいだ。
カイトは長髪男に人差し指をかざす。
「次は君か? キモロン毛くん。前歯全部を折ってやろうか?」
ニコニコしているが、圧倒的な威圧オーラが怖い。
そして、追い詰められた長髪男がナイフを取り出した。
「おっ、俺を怒らせた大変だぞ。わっ、分かっているのか? そっ、それに俺の兄貴は暴走族だぞ……」
そう言いながらも、長髪男は声も身体も震えており、パニック状態になっていた。ナイフは危険な武器であり、カイトでも刺されたら死ぬ可能性が高い。
だけど、カイトは余裕な表情を見せていた。
「早く刺しに来いよ、キモロン毛くん。行かねえなら、こっちから行くぜ」
「ちょ、ちょっと待って……。金なら出すから、タンマ、タンマ……」
「いや、待たん」
カイトは長髪男に向かって走り出して、そのままドロップキックを放った。長髪男は車に跳ねられたように吹き飛んで、背中から木に激突して、そのまま動かなくなった。これって、ガチで死んだかもしれない。
私は心配になり見に行くと、なんとか息はしていたが、小便を漏らしているようだった。ふう、生きていて良かったけど、カイトもやりすぎるタイプだし、絶対に敵にしたくない男だ。
私はカイトの方を見ると、坊主男の胸倉を掴んで説教をしていた。
「いいか、今度リコとテッペイに近づいたら、次はお前らの家に行くぞ。そして確実に殺す。あのロン毛にも同じことを言っておけよ、分かったか?」
坊主男は先程のダメージがあるのか、声が出ずにコクコクと頷いていた。圧倒的な格の違いに恐怖を感じたに違いない。これだけ脅しておけば、この2人もバカなマネは二度としないはずだ。そこにパパがヨロヨロと近づいてきた。
そして、カイトに頭を深く下げた。
「カイトさん、本当にありがとうございました。このお礼はいつか返します」
うん、これだけ喋れれば大丈夫そうだし、ママにも告白が出来そうである。
すると、カイトが煙草に火をつけながら、パパに喝を入れてくれた。
「なら、お前に頼みごとある。神社でリコが男に絡まれているから、それは自分の力でなんとかしろ。俺はお前の事は嫌いじゃないからよ、リコを守ってやってくれ……。頼むぞ、テッペイ」
「はい」
パパはそう返事をすると神社の方角へ走り出した。
私とカイトもその後を追う事にした。いよいよ、残りはシンジだけだ。




