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第36話 さらば、竹ノ内家

そして、ついに8月31日が来てしまった。


今日のチャンスを逃したら、もしかすると未来に帰れなくなるかもしれない。あれから結局のところ、桜井シンジ集団を倒す方法は思い浮かばなかった。


事前に警察を呼んでおくとか、告白する場所を変えるとか考えた。でも、何故か邪魔が入るのだ。神の力、運命、心霊、呪い、プラズマなどなど、本当の原因は分からない。だから、今日はぶっつけ本番で何とかするしかない。


思えばこっちの世界から来てから、色々な未来を変えてきたはずだ。そうだよ、バットは振らなきゃ当たらないだけだ。ダメ元でやるだけ、やってみよう。もう時刻は4時過ぎになろうとしていた。


とりあえず、竹ノ内家の面々に別れを告げておくか。


明日からは新学期は始まり、もうこの家には泊まることは出来ないのだ。カイトも既に上京しており、最後の別れ際にこう言っていた。最後はテッペイとリコの愛の力で、多分なんとかなるだろうと……。


バカ、なんとかならないから、こういう状況になっているのだ。まったく、最後までいい加減な男だった。カイトを伯父だと思う事は、これからもないだろう。


とりあえず、キョウコお婆ちゃんに別れの挨拶をしよう。


私がリビングに入ると、こちらに気が付いて、キョウコお婆ちゃんは声をかけてきた。

「あら、トキコちゃんどうしたの?」

「今日で家に帰りますので、今までありがとうございました」

「そういえば、今日で夏休みも終わりね。すっかり、リコの妹だと思っていたわ。うーん、なんでかしら? せっかくだから、夕食を食べてから帰りなさいよ」

「ありがとうございます。でも、今日は大切な用事がありますので……」


今日で自分の未来が決まり、場合によっては私の存在が消滅するかもしれない。


すると、私が険しい顔をしたせいか、キョウコお婆ちゃんは寂しそうにため息をついた。

「はああ、カイトも東京に行っちゃうし、トキコちゃんもいなくなると寂しいわね。今日から、リコと2人きりだと思うとね」

「また遊びにきますよ。最後にサチ婆ちゃんに線香をあげてもいいですか?」

「ええ、もちろん」


私は仏壇前に線香をあげた。どうか、孫であるママを守ってください。

「じゃあ、私行きますね」


すると、キョウコお婆ちゃんがいきなり抱きしめてきた。

「トキコちゃん、色々ありがとうね。リコが素直になれたのはアナタのおかげよ。これからも、ずっと一緒にいてあげてね」

キョウコお婆ちゃんの胸の中は温かく、すごく懐かしい気持ちになった。


小学校の頃はこういう風にしてもらったけど、未来のお婆ちゃんにもこうしてもらいたいな。

「はい、リコとずっと一緒にいます。その代わり、一つ約束してもらってもいいですか?」

「あら、何かしら?」

「煙草は体に悪いから、もう二度と吸わないでくださいね」

「そうね、分かったわ。それは約束するわ」


私は約束を信じた。だから、20年後に会おうね、キョウコお婆ちゃん。

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