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第35話 バットは振らなきゃ当たらない

パパが中学校は入学すると、すぐにレクリエーションの球技大会が開催されたらしい。みんなで親交深めるのが目的だ。


なので、全員が強制参加であり、サッカー、バスケ、ソフトボールの三つから選ぶ形式だった。運動神経のないパパは人が足りなかったソフトボールのチームに放り込まれた。


それは他のクラス混合のチームであり、ママも偶然そこにいたみたいだ。パパはエラーにエラーを兼ねて、チームメイトからのバッシングが酷かったみたいだ。


その結果、パパは腹が立ち不貞腐れて、打席に立ってもバットを振らない選択をしたみたいだ。試合はそのまま進んで、パパのチームが負けていたが、3点返せば勝てる状態だった。


そして、7回裏、ツーアウト、満塁の状態でパパの打順が回ってきたのだ。ここでアウトになると、試合終了である。なので、パパは恥をかきたくないし、打てないのが分かっていたので逃げたかった。


すると、次の打順のママがアドバイスをしてきたそうだ。

「おい、どうせ負けるなら、バットを振って三振しろよ。その方が男らしくていいよ」

「でも、負けるなら一緒だろ? 振っても振らなくてもさ……」

「アハハ、別に説教する気もないし、負けても誰も気にしないよ。ただ、バットを振れば当たる可能性はゼロじゃない。つまり、バットは振らなきゃ当たらない。それだけだ」


その言葉を聞いた瞬間、パパは初めて何かに挑戦しようと思ったらしく、バットを振るだけ振ってみた。すると、奇跡的にバットに球が当たったが、内野ゴロで試合は終了した。その時の感触は今でも忘れられないそうだ。


パパは懐かしそうに語ってくれた。

「あれから、漫画家を目指すようになった。どうせダメでも、やってから後悔しようと思った。そもそも中学に入るまでは、バットに球が当たる経験なんかなかったからね」

「そうだったんだ」


あの名言はママだったのか……。言いたいことは、何か挑戦すれば成功する可能性があるってことだ。私だって頑張れば、桜井シンジ集団をなんとか出来るかもしれない。よし、やるだけやってみるか。


まずは情報収集から始めよう。

「あのさ、桜井シンジってどういう男か知っている? 実は裏表があるとか?」

「ああ、実は不良だろ」

「なんだ、知っていたの?」

「うん、中一の時に同じクラスだったし、トイレで煙草吸っていたのも知っていたからね。今は落ち着いているみたいだけど……」

そう言うと、パパのテンションは下がっていく。


もし、8月31日にシンジが喧嘩を売ってくる事を伝えたら、パパは怖気づいてしまうかもしれない。そしたら、告白がダメになる可能性が高くなる。


やっぱり、私が桜井シンジ集団を倒して、パパとママを守る作戦しかない。


だけど、失敗したらパパに託すべきだ。

「テッペイ、もしもの時はリコを守れる男になりなよ」

「うん、分かっているよ」

私はパパの言葉を信じることにした。

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