第31話 花火大会
いよいよ、花火大会の日がきた。
待ち合わせ場所はいつもの公園にした。今日がラストチャンスであるので、パパを待ち合わせ時間より早く呼び出した。
もちろん、告白するように促すためだ。
「テッペイ、今日告白しなよ。夏休み中にケリをつけよう」
「うん、分かっているよ」
そのパパの目には覚悟が見えたので、こちらも最大限に協力するつもりだ。ちなみにパパの私服はカイトのコーディネートだ。ポロシャツにジーンズ姿で、足元は買ったばかりのスニーカーだ。とにかく、サイズ感と清潔感を出すようにした。
それから、私はパパのテンションを上げておく。
「テッペイ、途中でリコと2人きりにするから、その時が告白のチャンスだからね。私は何があっても、テッペイの味方だからね。絶対に成功するから頑張りなよ」
「トキコ、頑張ってみるよ。本当にありがとう」
よし、絶対にパパの告白を成功させてやる。そしたら、私も元の世界に戻れるはずだ。
私はママが来るまでアドバイスを続ける。まずは見た目を誉める基本中の基本だ。
「まず、リコが来たら浴衣姿を誉めて」
「うん、分かった」
「次に髪型を誉める」
「うん、分かった」
「そして……」
いや、いや、なんか違うぞ……。パパは普通の男子ではないし、こんな小手先の恋愛テクニックは意味がない。ママもパパのそんな部分には期待していないはずだ。とりあえず、自分の本音で話す事が重要だ。
だから、私はパパらしい告白をさせる事にした。
「そう、リコは気取らない男が好きだと思うから、テッペイが思っている本音を伝えた方がいいよ。それが間違っていたとしてもね」
「うん、俺らしくやってみる」
しばらくすると、浴衣姿のママが到着した。
「よっ、お待たせ。2人とも早いな」
ママは浴衣姿が凄く似合っており、パパも見とれているようだった。
そして、私達は花火大会の会場に向かって歩き出した。時刻は夜の7時前であり、道中には沢山の人々と夜店が溢れかえっていた。その時に大きな音ともに、夜空に美しい一凛の花が咲いていた。
ママが思わず呟く。
「キレイ……」
すぐに沢山の花火が打ち上がり、大勢の人がその光景に見とれていた。もう、夏も終わりが近いと思うと、少し寂しく感じた。
私達は海岸の砂浜まで移動した。ちょうど椅子代わりの石段があったので、ここに座って花火を見ることにした。この位置なら、水中花火も良く見えるだろう。
海岸には夜店や人々が密集しており、大声を出さないと隣の人の声も聞こえない状態だ。よし、これなら顔を近づけないと会話にならないので、2人の親密度も高くなるはずだ。
後はパパとママを2人きりにして、少し離れた後方から様子を観察してればいい。2人は花火の方向を見ているし、暗闇で人も多いから気づかれないはずだ。
さてと、お邪魔虫はログアウトしますか……。
「リコ、私はちょっと夜店見てくるわ。数分後には戻ってくるよ」
「じゃあ、帰りにリンゴ飴を買ってきてよ。旗のお礼もしたいから、テッペイの分もよろしく」
ママはそう言って、1000円札を手渡してくれた。
「はいはい、了解したよ。じゃあ、ごゆっくりどうぞ」
よし、5分後にこの場所に戻ってきて、後ろから2人の様子を見てみるとするか。私は夜店の通りに向かったが、人が多すぎて暑苦しかった。
まずはかき氷でも買って、水分補給をしないと死にそうだ。私はかき氷を買いに行った。
かき氷の中で一番好きなのがブルーハワイというシロップだ。味の元は分からないけど、名前からリゾート感が出ており、色も青色でキレイだから好きなのだ。
私はかき氷を口に頬張りながら、パパとママのいる場所に戻ることにした。あの状況なら、嫌でも会話をするしかないし、ママもパパのことは悪く思ってないはずだ。あとは告白すれば楽勝なはずだった……。
しかし、私は先程の場所に戻ると、パパとママの周りに見覚えのある集団がいた。それはホームセンターにいた桜井シンジ集団だった。
しかも、シンジがママの腕を掴んでいた。
「リコ、悪いけどさ……。ちょっと、2人だけで話をしたい」
パパがそこに止めに入った。
「おい、乱暴はやめろよ」
すると、取り巻き集団がパパを囲む。
「時空院くん、落ち着けってよ。男だろぉー」
「はい、リラックス、リラックス」
「そうそう、怒らない、怒らない」
しかも、取り巻き集団はニヤニヤとバカにするような感じだ。おそらく、シンジはママを今日中にモノにするつもりだ。さてと、これからどうするか?




