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第30話 親たちの青春

夏休みは8月に入ると、瞬く間に時間は過ぎて至った。


パパは8月中旬頃には、旗作りと漫画を1作品完成させていた。旗の完成度は高くて、応援団の人も笑顔で喜んでいた。


漫画の内容は処女作の割には話に矛盾がなかったが、作画は結構ひどい点も多かった。私も同人誌レベルではよく見るが、体のデッサンが狂っている所があった。それでも、一つの作品を完成させるだけ凄い。


私も中学入学当初に漫画を描こうとした事があったが、最初から完璧な作品を作りたいあまり、嫌になって途中で投げ出してしまうのだ。つまり、自分で自分の実力不足を認めてたくないのだ。


逆にパパは最後まで投げ出さなかったのでカッコいいと思った。彼は自分で決めた夏休みの目標を達成したのだ。


同じ頃、ママもソフト部の大会でベスト4の成績を収めていた。全国に50チームもあるので、その中で4本の指に入るとは凄いことだ。もちろん才能もあるけど、努力を惜しまなかったのが結果に繋がったのだ。


ひょっとすると、パパとママは凄い人達なのかもしれない。


そして、ママの準決勝の日が来た。私とパパはもちろん、カイトやキョウコお婆ちゃんも試合を見に来た。しかし、ママの運も悪く、相手は昨年に優勝した強豪チームであった。


相手のピッチャーの球が速く、誰も打てない状態が続いた。それでも、みんな見逃しをせずにバットを振り続けたが、ヒットを打って塁に出たのはママだけであった。その結果、房総中は1点も点を入れる事はなかった。


最後はママの打ち上げたフライが捕られて、あっけなく試合は終了した。ママとソフト部員達は号泣しながら抱き合っていた。その姿にキョウコお婆ちゃんも目に涙を浮かべていた。


しばらくして、ママは負けた後なのに笑顔で戻ってきた。

「ごめん、負けたわ」


すると、キョウコお婆ちゃんがママの頭をポンポンする。

「リコ、頑張ったね。家に帰ったら、サチ婆ちゃんにも知らせないとね。天国で喜んでくれているよ」

「ああ、分かっているよ。仏壇に線香をあげて報告するよ」


全国優勝の約束は無理だったけど、ママも満足そうな顔をしていた。サチ婆ちゃんも天国で喜んでいるかもしれない。


私もママを誉めたたえた。

「いや、カッコよかったよ。あのピッチャー相手にヒット打つなんて凄いよ」

「まあね、バットは振らなきゃ当たらないしね」


そこにパパが冷えたドリンクを差し出してきた。

「リコ、なんか勇気をもらえたよ。明日さぁ、俺も東京の出版社に持ち込みに行ってくるよ。ボロボロに負けるかもしれないけど、リコみたいに最後まで頑張ってみるよ」


ママは嬉しそうにパパの背中をバシーンと叩いた。

「アハハ、テッペイも頑張ってこいよ」

「ごほっ、ごほっ……。わっ、分かってるよ」

私はパパの作品が編集者の目に留まるように祈った。


そして、数日後にパパは東京から帰ってきた。結果はボロ負けだった。どうやら、編集者からボロクソに言われたみたいだが、褒めてくれた部分も少しはあったみたいだ。


それはストーリーであり、発想が独特で面白いと評価してくれたらしい。しかし、もっと経験を積むためにも、色々な作品を描いた方が良いとアドバイスを頂いたみたいだ。


パパはそれを真に受けて、また新しい作品を描く予定らしい。この経験がライトノベル作家に生かされたのかもしれない。


とにかく、私はこの夏休みにパパとママの青春が見られて良かった。ママは全国ベスト4の成績を残して、パパも漫画で1作品を描き上げた実績を残した。2人とも、充実した夏休みを過ごせて羨ましかった。


逆に私は中学最後の夏休みをダラダラと過ごそうとしていたので、自分自身が恥ずかしく感じた。もう、遺伝子の問題というよりは、自分自身の怠けな性格な気がしてきた。


確かにママも強い人間なのかもしれないけど、自分よりも強い相手にも一歩も引かなかった。パパも人からバカにされても、何度も立ち上がるだけのメンタルがある。私はこの両親の遺伝子があると思ったら、ほんの少しだが勇気が湧いてきた。


話は変わるけど、この夏休みでパパとママはお互いを認め合ったみたいだ。私から見ても2人の会話に緊張感がなく、2017年の世界のやり取りと変わらない関係になっているからだ。


しかし、まだ恋人関係にはなっておらず、夏休み終了までは1週間しかない。次の花火大会で告白すれば返事はオッケーなはずだ。


だけど、人生は肝心な時に災害がやってくるのだ。そう、桜井シンジ集団という災害がすぐ近くに来ていたのだ。

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