第27話 パパ、ついに動く
ヤバい、ヤバい、やっぱり告白だ。
でも、どうしたらよいのだろう? ここから飛び出して妨害でもするか?
それよりも、自分の親が告白されている場面って相当恥ずかしい。家族でファミレスに行って、同級生のグループに遭遇したような感じだ。それより、頼むから告白を断ってくれ。私という存在が消滅しちゃうよ。
しばらくして、ママはついに答えを出した。
「ありがとう。気持ちは嬉しいけど、今は部活を優先したいから、恋愛とかに興味はない。だから、ゴメン」
よし、よし、ママが断った。良かった、良かった……。
ここで普通の男子なら諦めるのだが、モテ男のシンジは1枚上手だった。
「そっか……。でも、部活を引退したら考えておいてよ。夏休みが終わる頃に、もう一度だけ返事を聞かせてよ。それで、無理なら諦めからさ」
「うん、分かった」
ヤバい、返事が延長になっただけだ。パパは告白してないから、後手で不利な状況である。でも、この場はなんとかしのげた。
別れ際にシンジは王子様スマイルを見せた。
「リコ、今日はありがとね。じゃあ、ソフト部の部活頑張ってね。おやすみー」
「うん、そっちもサッカー頑張れよ」
「おう」
シンジはカッコよくピースサインを作って、自転車に乗って夜道に消えて行った。くそ、帰り際もカッコいいじゃないか……。
ヤバい、ママがこっちに近づいてくる。ここで、見つかると面倒なので、体をダンゴムシのように丸めた。
それから、ママは門を開けると、こちらに声をかけてきた。
「2人とも、のぞき見なんか趣味が悪いぞ。あとな、トキコは頭がはみ出しすぎだよ」
くそ、見つかっていたのか?
すると、カイトが頭をコツンと叩いてきた。
「バカ、お前は顔を出しすぎだし、鼻息も荒いんだよ。スハー、スハーってよ。ダースベーダーかよ」
うへー、酷い例えだなあ。それより、ママとの信頼が大切だ。
なので、私はちゃんと謝る事にした。
「リコ、怒っている? 覗くつもりはなかったんだけど……。ゴメン、言い訳だよね」
「バカ、怒ってないよ。トキコには色々と感謝しているしね。それより、みんなでデザートでも食べようよ」
「うん」
どうやら、気にしていないみたいだ。
家に入る前にカイトが耳打ちしてきた。
「あれじゃ、テッペイは勝てないな。かなり、厳しい戦いになるぜ」
「うん、分かっているよ」
それでも、パパには勝てってもらわないといけない。人気のない政治家の秘書って、いつもこんな気持ちなのかな? 弱い人間が強い人間に勝つのは大変だ。そう、いつの時代でもそれは同じだ。
あれから、数週間の月日が流れた。ママは部活に明け暮れる日々を過ごしていた。私は家にいても暇なので、美術部に顔を出す生活をしていた。理由はパパとの信頼関係を作る必要があるからだ。
私は毎日のように、オタク話をして親睦を深めていた。
「テッペイはこれからのゲーム業界はどうなると思う?」
「ゲームボーイもカラーになるらしいから、携帯ゲーム機が主流の時代になると思うよ」
確かに20年後にはスマホゲームが大ブームになっているので、あながち間違った認識ではない。インターネットが発達して、誰とでも気軽にゲームができる時代が来るとは、パパも夢にも思っていないはずだ。こんな感じの会話で仲良くなっていった。
さてと、女子と喋るのも慣れてきた所だし、そろそろ本題を切り出した。
「ねえ、テッペイはリコが好きでしょ?」
「いや、まあ友達ではあるけど……。まあ、いい奴だよね」
「違う、違う。ライクじゃなくて、ラブの方だよ」
「いや、それは……。よく分からないけど……」
まあ、簡単には認めないよね。奥手で小心者のパパだから、誰かに背中押されないとダメだ。
私は心に揺さぶりをかけた。
「あのさ、桜井シンジがリコに告白したよ」
「えっ、マジ?」
パパの顔がみるみると変わっていく。顔はイケメン、サッカー部のエース、成績優秀などなど、学校で一番人気の男子だ。パパも自分では勝てないと感じているはずだ。
だけど、私が助け船を出せばいい。
「でも、まだ返事はしてないよ。部活を引退してから返事をするみたい」
「そっか……」
「私で良かったら、テッペイの恋愛に協力するよ。2人が付き合ったら嬉しいからさ」
そう言うと、パパの顔は明るくなった。
よし、よし、話に乗ってきたな。
「トキコ、本当に協力してくれるの?」
「うん、リコにも内緒にしておくよ。この夏に告白しようよ」
「じゃあ、よろしくお願いします。でも、こないだ不良にボコボコにされたばっかりだし、普通の女子なら幻滅するはずだろ? リコはどう思っているのかな?」
海でカツアゲされた件を気にしているのか?
なら、なんとか自信を付けさせるしかない。
「あれはリコも褒めていたよ。自分より強い相手に向かっていくのに感動していたよ。あれがきっかけで、ソフト部に戻る気になったみたいだしね。全てはテッペイのおかげだってさ」
「そう思ってくれたら、本当に嬉しいよ。うん、本当に……」
パパが笑顔になっていく。よし、あと一押しでなんとかなりそうだ。まずは自信だ、根拠がなくても、自信のある男はモテるものだ。もっと、自信をつけさせたい。




