第26話 ママ、告白される
夕食時にママは帰ってきた。
4人でいつも通りに食卓を囲んでいると、キョウコお婆ちゃんが嬉しそうに口を開く。
「リコ、部活に戻ったの? カイトから聞いたけど、本当なの?」
「うん、色々と迷惑かけてゴメン。今度はサチ婆ちゃんの為じゃなくて、自分の為にソフトボールをやりたいだけだよ」
そう言うと、ママがこちらを向いて笑顔を見せた。
「全部、トキコのおかげだけどな。トキコがハルミ達に謝るきっかけを作ってくれたんだ。だから、本当に感謝しているよ」
「あら、そうなの? トキコちゃんが来てから、色々と良い方向に変わっていくわね。まるで、座敷童みたいで、本当に可愛らしい子ね」
なんか、褒められるのって気分がいい。こうやって、褒められる経験値を増やしていくと、性格の良い人間になるのが分かる。私は説教や怒られる経験値が多すぎるから、性格がねじ曲がったのだ。これからは、褒められる行動を増やしていこう。
そこに、カイトが余計な事を言ってきやがった。
「まあ、座敷童は可愛いけど、トキコはまったく可愛くないけどな。ガハハハ」
「ふん、別にカイトには褒められたくないもん」
そう言うと、みんなは笑い出した。最初のピリピリした食卓の雰囲気はもうなかった。
キョウコお婆ちゃんもそう思ったらしい。
「アハハ、久しぶりに家族の雰囲気がいいわね。私もストレスがなくなるし、煙草もいらなくなるかもね」
「オフクロ、いい加減に禁煙しておけよ。向こうでサチ婆ちゃんも心配しているからよ」
「そっ、そうね……。禁煙頑張ってみるわ」
こうして、竹ノ内家に平穏が戻ってきたのだ。それから、夕食後はみんなでテレビ見ながら過ごした。ママもサチ婆ちゃんも機嫌良くて、幸せな時間が流れていく。
その時、インターホンが鳴った。
「あら、こんな時間に誰かしら? リコ見てきてくれない? だって、私の好きな俳優が出ているのよ」
キョウコお婆ちゃんはテレビに出演しているイケメンに釘付けだ。
ママは渋々と返事をしてリビングから出ていった。
「はいはい、アタシが行けばいいんでしょ」
こんな時間に誰だろう? 来客や宅急便ってわけでもないはずだ。ママは数分後に戻ってくると様子がおかしかった。
カイトも察したのか声をかけた。
「リコ、誰だった?」
「うん、クラスメイトだったから、ちょっと5分だけ家の前で話してくる。すぐに戻るから」
そう言うと、ママは再びリビングから出ていく。
私はクラスメイトという言葉に不安を覚えた。ハルミおばさんやパパだったら、友達という言葉を使うはずだから、ママとあまり親しくない人物だと思われる。何だか凄く嫌な予感がする。
この嫌な予感は負け犬しか分からないものだ。小学校時代にドッチボールで顔面に当てられて、眼鏡がぶっ壊れつつ、鼻血を出した時もこんな感じだった。
私はママの後を追う事にした。
「ちょっと、私も見てきます」
リビングを出ようとすると、カイトが手を引っ張ってきた。
「待て、俺も行くわ」
キョウコお婆ちゃんはテレビに夢中で興味がないみたいだ。私とカイトはリビングから飛び出した。
私は玄関から出ようとするが、カイトが止めに入る。
「バカ、裏口から行くぞ。玄関から出たら気づかれちまうぞ。多分、男だろ」
「私もそう思う」
私達は裏口から忍び足で出て、玄関の門の方を覗くと、ママと桜井シンジがいた。
あれ、これって……。リア充の告白じゃないのか?
「カイト、これってさ……」
すると、カイトが口を塞いできた。
それから、人差し指を口に当てて、喋るなというポーズをする。まずは黙って聞けよって事だ。私達は家の塀に身を潜めて、2人の会話を盗み聞きした。
どうやら、シンジがママに喋りかけているようだ。
「リコ、ごめんね。家にいきなり来ちゃってさ」
「ううん、こないだは助けてくれてありがとう。それで用って何?」
「実は前からリコの事が気になっていた。俺と付き合ってくれないか?」




