第25話 キョウコお婆ちゃん、禁煙するってよ
全員が肩を組んで、グランドの地面を見る。
それから、レイカが大声で叫ぶ。
「じゃあ、部長が復帰したという事で挨拶をしてもらおうか。いつものやつ頼むよ、リコ」
ママが大声を出す。
「じゃあ、行くぞぉー。絶対に勝つぞぉー」
その声に部員たちが返事をする。
「イエッー」
それから、ママが大声をして、再び部員に呼びかけをする。
「気合いれていくぞぉー」
「イエッー」
「房総中が最強だ、アタシ達が最強だぁー」
「イエッー」
そして、部員達はママを胴上げしていた。まったく、体育会系はバカで単純な生き物だし、見ている方が恥ずかしくなる。彼女達は学校の中心だから、青春ドラマみたいなことも恥ずかしくないのだろう。私は恥ずかしくて死んでしまうので無理だ。
これが文科系の喧嘩だったら、半年以上は引きずるものだ。場合によっては一生口を聞かない事もある。体育系のノリは嫌いだけど、男子みたいな友情で羨ましくも思えた。
この日から、ママはソフト部の練習に参加するようになった。なんだかんだ言っても、ママはソフトの練習をしている時は楽しそうだった。私も役に立てて嬉しかったし、意外に行動すればなんとかなるものだ。いつも、こうならいいのにな。
その日に家に帰ると、カイトの部屋に足を運んだ。
「ママがソフト部に復帰したよ」
「マジか? お前がやったのか?」
「まあ、私も手伝ったけど……。最後はママが素直に謝って、みんなが許してくれた感じだったよ」
カイトはベッドに座って、私の顔をマジマジと見てきた。
「お前変わったよな。最初は泣き言しか言わなかったのに……」
「ふん、当たり前でしょ? だって、パパとママが結婚しなかったら、私という存在が消滅するしね。自分で動くしかないもん」
「それでも、サチ婆ちゃんの最後を看取れたのも、リコをソフト部に戻したのも、全部お前の行動のおかげだぞ。自分のことを過小評価しているみたいだけど、本当はなんでもこなせるタイプだろ? トキコみたいなドンくさい女でも、行動してみればなんとかなるものだな。ガハハハ」
ふん、ドンくさいは余計だよ。確かにカイトの言う通り、元の世界では何かに挑戦はしなかった。でも、死ぬ気になると意外にこなせるものだ。
それにママの中学時代も、意外に順風満帆ではなかった事も分かった。みんなの前で泣きながら謝っていたしね。どんな人間でも恥をかく時があると知れて心が楽になった。みんな、それなりに壁に当たっているのだ。
それから、カイトが朗報なニュースを伝えてきた。
「オフクロの禁煙の件だけど何とかなりそうだ」
「えっ、なんで?」
「お前のいた未来と違って、サチ婆ちゃんの最後を看取れたからだと思うぞ。おそらく、それがきっかけで、オフクロも子供や孫に迷惑をかけたくないと思ったみたいだ。その為にも、まず健康が重要だと思ったらしく、禁煙セラピーに通うみたいだ。まあ、続くは分からないけどな」
「本当に?」
「ああ、今回はマジっぽいぞ」
キョウコお婆ちゃんが禁煙してくれたら嬉しい。なぜなら、未来では一緒に暮らせる可能性が高くなるからだ。なんか、とんとん拍子で人生がうまくいっている気がする。しかし、ここで油断は出来ない。
あと変えたい未来は一つだけだが、これが難関な課題だ。そう、パパとママを恋人関係にするだけだ。とりあえず、桜井シンジは邪魔である。パパを勝たせるのは難しいけど、どんな手を使っても勝たせるしかない。
私やパパだって、バットを振れば当たる可能性はゼロじゃないのだから……。だから、私も今回はマジだぜ。




