第22話 海水浴でピンチ
明後日後、私達は房総の海に来た。
太陽は眩しく、海は青く、空は広く、楽しい海水浴になりそうだった。3人は砂浜に敷いたレジャーシートの上に寝そべっていた。私もママも水着をレンタルしたけど、パパはポロシャツにハーフパンツというスタイルだ。
おもわず、私は小声で耳打ちした。
「なんで、水着に着替えないの?」
「俺泳げないから」
まったく親子そろって、カナヅチとは情けない。私もパパも運動神経が死んでいるのだ。
ママはサーファーがタイプと言っていたけど、それ以前に泳げないのではどうしようもない。クソ、別の路線で惚れさせるしない。そこにアロハシャツとサングラス姿のカイトが入ってきた。
アロハシャツの袖から飛び出した2本の筋肉質な腕が威圧感を与える。まるで、ヤクザかチンピラにしかみえない。
カイトはサングラスを外して、パパに声をかけた。
「おう、お前がテッペイか?」
「はい、今日は誘って頂いてありがとうございます」
「おうおう、今日は楽しんでいってくれ。そのお礼の代わりとして、4人分の焼きそばと飲み物を買ってきてくれよ。お前1人じゃ運べないだろうから、リコにも手伝わせるよ」
なるほど、2人の時間を作ってあげる作戦だ。カイトも協力してくれるとは頼もしい限りだ。
ママはしぶしぶと返事をする。
「もちろん、兄貴のおごりだよな?」
「ああ、おつりは返せよ」
カイトはそう言うと、財布から1万円札を出した。ママはお金を受け取ると、パパと一緒に売店の方角へ歩いて行った。
カイトは2人の後ろ姿を見ながら、ため息を深くついていた。
「あんな、モヤシなのか? こりゃ、厳しい戦いになるぞ」
「そんなのは分かっているよ。でも、やらなきゃいけない戦いだよ」
「まあ、俺も協力するから心配するなよ……。あっ、今の子カワイイな。悪い、ちょっとナンパしてくるわ」
この重要な時にナンパ? さすがに冗談なのだと思ったのだが、カイトは通り過ぎた女の尻を追いかけて、どこか遠くへ消えていってしまった。マジでナンパに行ってしまうとは……。
私は1人きりになってしまい、周囲から孤独と思われていないか心配になった。もしかして、1人で海に来ている痛い女だと思われているかもしれない。もし、クラスメイトに偶然会ったら、同情の目で見られる可能性が高い。ああ、見下されるのは嫌だなあと、内心ビクビクしていた。
そんな事を考えている内に、パパとママの帰りが遅い事に気がつく。もう、あれから20分以上も過ぎている。もしかして2人に何かあったのか? ママが美少女だから、不良とかに絡まれているかもしれない。
こんな時にカイトがいればいいのだけど、お互いに携帯を持っていないので連絡の取りようがない。そもそも、私は電波のないスマホだしね。仕方ないけど、1人でなんとかするしかない。
私は恐る恐ると売店の方へ歩いて行った。しかし、売店の周りを見回しても、パパとママの姿はなかった。しかし、売店の裏から聞きなれた声がしたので行ってみた。
そこには人気のない空き地のようなスペースがあった。私はそっと覗いてみると、パパとママがヤンキー男3人に絡まれていた。おそらく、カツアゲとかだ。
どうやら、ママが怒っているようだ。
「だから、お金なんかないよ。しつこいと警察呼ぶよ」
リーダー格の茶髪の男が口を開く。
「まあまあ、そう怒るなよ。お金ないなら、俺らとデートしようよ」
「友達と来ているから、もう間に合っているよ」
「へっー、その男が彼氏ってわけか?」
すると、茶髪男はパパの胸倉をつかむ。
「ワハハハ、とりあえず真面目君は帰ってもいいぞ。さっさと、帰らないと殺すぞ?」
その瞬間、パパは茶髪男にタックルをした。
「リコ、逃げろ。俺が時間を稼ぐ」
しかし、茶髪男はビクともせず、パパの頭を押さえてゲラゲラと笑っていた。
「ワハハハ、コイツ貧弱すぎるだろ? 俺が時間を稼ぐって、それカッコいいと思っているのかよ? 漫画の見すぎだろ? じゃあ、現実を教えてやりますか……」
そして、茶髪男はパパを簡単に投げ飛ばした。
パパはバランスを崩して、地面に前のめりに倒れたのであった。他の2人の不良もゲラゲラと声をあげる。さすがにヤンキーが3人もいたらどうにもならないよ。しかし、そこに1人の男が助けにきた。




