第21話 これなら、なんとかなるかも
私は家に帰宅すると、ママの部屋に入った。
「ただいまー」
「おう」
ママはそう返事をして、目も合わせずに、目の前の漫画を夢中で読んでいる。
すぐ近くにはコーラとポテトチップスがおいてある。ゲームと漫画で1日を潰したのかよ。まったく、私の休日と大して変わらないじゃないか。しかし、こう客観的にみると酷い生活だよね。
それはそうと、パパとの接点を作らなきゃ……。
「ねえ、リコ……。明日学校で行くでしょ?」
「ああ、応援団の打ち合わせがあるよ。例の旗のデザインな」
「そっか、実は同じ美術部のテッペイも手伝うことになったよ。人数が多い方が早く終わるからね。だから、美術部に顔を出してよ」
「ああ、分かったよ。打ち合わせの後でいいか?」
「うん、頼むよ」
よし、これで2人が接触する機会を作れたので、後は徐々に会う回数を増やしていけばいい。そして、夏イベントの海水浴や花火大会などで、パパから告白させる作戦だ。私もリアル恋愛は知らんけど、ゲームではこういうイベントで、恋人関係になるものだ。
そして、次の日。ママは応援団の打ち合わせに参加した。初日は午前中で終わったので、午後はパパのいる美術部へ足をはこんでくれた。
もちろん私も一緒だ。
「テッペイ、リコを連れ来たよ」
パパとママが対峙する。夏休み前に神社で会っていたみたいだから、お互いに緊張はしてないように見えた。
ママが頬を掻きながら挨拶をした。
「よう、テッペイ久しぶり」
「ああ、リコか……。最近は神社に来ないね」
「うん、部活やめたのが母親にバレたから、夜に時間潰す必要がなくなっただけだよ。それにお婆ちゃんが死んでさ、ショックを受けている母親に心配させたくないから、しばらく外出は控えているよ」
「そっ、そうなんだ……」
親族の死の話題なので、パパが尻込みしてしまった。次にどういう話題をふったらいいのか迷っているのだ。
私は空気が重くなりそうなので、適当に話題を変える事にした。
「それはそうとさ、リコが旗のデザインをやるから協力してよ。ねっ、テッペイ頼むよ」
「そこに関しては任せてくれよ。こう見えても、美術部の部長だからね」
ママも頭を下げてお願いした。
「アタシは絵心がないから、2人ともよろしく頼む」
とりあえず、2人の仲も悪くないので良かった。これなら、なんとかなるかも。
それから、私達は旗のデザインについて色々と話し合って、親睦を深める事が出来た。デザインの話だけなく、お互いの悩みについても話した。
ママはソフト部に戻りたいが、素直になれない状態が続いていること。パパは漫画家の夢として、この夏休みに1本の作品を完成させたいみたいだ。どうやら、ネームはもう終わっているらしい。私は適当な嘘の悩みで誤魔化した。ふと気が付くと、時刻は5時を過ぎようとしていた。
私は帰る前にテッペイに耳打ちした。
「今度海行くからテッペイも来なよ。リコと仲良くなれるチャンスかもよ」
「まあ、行ってもいいけどさ……」
素直に返事が出来ないのは、男子中学生の照れのようなものだ。これだから、男子って面倒な生き物だよ。私はパパの電話番号を聞いて帰ることにした。渡された番号は家の電話番号だった。そういえば、今と違って中学生が携帯をもっている時代じゃなかった。
まあ、とにかく連絡先が分かればいいし、今日はこんな所で十分である。
「じゃあ、今日はこれで解散しようか? リコもテッペイもご苦労様ねー」
こうして、初日は無事に終了した。帰り道は夕日が綺麗で、カラスと蝉の鳴き声が、私を応援しているような気がした。
私は家に着くと、カイトの部屋に行った。部屋の中では若い女性がメソメソと泣いていた。おそらく、カイトが連れ込んだ女である。
その女はこちらに気づくと、部屋から飛び出していった。痴話喧嘩でもしたのだろうか? だけど、カイトは追いける様子もなく、煙草をプカプカと吹かしていた。私
は頬を膨らまして言ってやった。
「ねえ、今の人を追いかけなくていいの?」
「別にいいよ、女なんていくらでもいるし……」
はあ、本当に最低な男だなあ。でも、実際に女に人気あるのはカイトみたいな肉食系男子だ。パパみたいな草食系男子は人気がない。これはいつの時代も同じなのかもしれない。
それはそうと、次は海でデート作戦だ。
「そういえば、カイトって車を持っているよね? 軍用車みたいなやつ」
「バカ、人気のパジェロだぞ。4WDで性能もいいぜ」
「車の種類なんてどうでもいいよ。それより、私達を海に連れて行ってよ」
「ああ、それ位はいいぞ。正直面倒くさいけど、上京するまで暇だから付き合ってやるよ」
こうして、私達は明後日に4人で海に行くことになった。ママとパパも楽しんでくれると嬉しいな。




