第20話 中二病という病
私はとにかく自信をつけさせる作戦から始めた。
「リコから聞いたけど、漫画描いているんですよね? 時空院さんの作品見せてくださいよ」
「うん、いいよ。あとさ、テッペイでいいよ。同級生だし、敬語もやめようよ」
「じゃあ、私もトキコでいいよ。よろしく」
「早速だけど、この作品の感想を教えてほしいな」
そう言って、パパは少し照れながら、スケッチブックを差し出してくれた。
スケッチブックの1ページ目は作品の世界観が文章で記載されていた。2ページ目は主人公のイラストだ。見た目は美少年で黒色のロングコートを羽織っており、シルバーアクセサリーをジャラジャラと身に着けている。ついでにキャラクター設定みたいのも、イラストの横に記載されていた。
名前:黒影黒闇
職業:高校生の殺し屋
年齢:16歳
必殺技:黒宇宙黒波動
設定:地球最強の殺し屋のトップであり、CIA、元KGBから追われている。アメリカ大統領とロシア大統領を敵にまわしても、不敵な笑みを浮かべるクールキャラ。
しかし、高校生で殺し屋って設定も凄いけど、黒宇宙黒波動って技名が痛々しくて恥ずかしい。あとはアメリカとロシアの大統領を敵にまわすのはキツイすぎる。この時代だと、クリントンとエリツィンだったはず……。
この2人を敵にまわして不敵な笑みなら、誰を敵にまわしたら驚くのだろう。まったく、これだから中二病は痛々しい。でも、将来はライトノベル作家になるから凄いよね。
とにかく、私はキャラを誉めまくった。
「うん、うん、凄くいいなあ。圧倒的な強さが魅力だね」
「まあね、えへへ」
パパは褒められた経験が少ないから、褒めれば気分をよくしてくれるはずだ。
そうすれば、私にも心を開いてくれるだろう。
「やっぱり、将来は漫画家とか目指しているの?」
「まあね、えへへ」
「テッペイなら、すぐに漫画家デビューできそうだね」
よし、バンバンと持ち上げていくぞ。これはチョロいかもしれない。自信をつけてくれ、若き日のパパ。
そこで、いきなり口調が変わった。
「いや、それは無理」
「いや、なんで?」
「漫画家はそんなに甘くないよ。売れている人は本当に一握りだけだ。だから、芸能人になるレベルの難しさだし、それに努力しても報われる世界じゃないよ」
どうやら、パパは思ったよりも子供じゃなく、現実が見えているタイプみたいだ。ただのお調子者のオタクではないってことか……。
私はパパに質問をしてみる。
「ねえ、努力しても報われなかったらどうするの?」
「また、次の夢を見るだけだよ。漫画家がダメなら小説家とかね。俺は空想の物語を作るのが好きなだけだよ。理由は自分自身が冴えない人生を送っているからだと思う」
「ふーん、そっか……。私はテッペイとは違って、夢には挑戦しないタイプだよ。だって、失敗するのが怖いし、傷つきたくないもん」
「分かるよ、俺もそうだった。でも、自分からダメ元で挑戦して失敗したら、意外と納得出来るものだよ。例えば野球が下手でも、バットを振れば当たる確率はゼロじゃないでしょ? バットは振らなきゃ当たらない。つまり、挑戦しなかったら、何も起きないって事だよ」
確かにパパの言う通りで、自分から動かないと何も手に入らない。私もそれを分かっているのだが、それでも何も行動したくないタイプなのだ。しかし、人間にはどうしても行動しないといけない時がある。
それが今であり、私は未来を守るために動いている。だから、どんな手を使っても、パパとママを恋人関係にしなければいけないのだ。
私は直球勝負に出た。
「テッペイは好きな人かいるの?」
「あっ、いない……」
パパは鼻を触って目線を下に逸らした。これはパパが嘘をついている時の癖だ。
つまり、好きな人か気になっている人とかいるのだ。
「いや、例えばリコとかどう?」
「まあ、美人だよね」
「そういえば、リコがテッペイのこと話しやすいって言っていたよ」
すると、パパは手で頭に掻きながら、照れたような表情をしていた。まあ、美少女に好かれて気分を悪くする男子もいないだろう。明日は応援団の打ち合わせがあるから、ママも強制的に学校に来ないといけない。
そうだよ、これはチャンスだよ。
「あのさ、リコが応援団の旗のデザイン担当らしいよ。でもね、絵心がないから、テッペイが相談に乗ってあげてよ。明日学校に来るからさ」
「別にいいよ、夏休み中は部室にずっといるよ」
そうクールな口調でいったが、口元はニヤリとしているので本当は嬉しいのだ。当初の馴れ初め通り、旗のデザインの相談から親睦を深めてもらうのがベストだ。
それから、パパと色々な雑談をして仲良くなった。2人共オタクであるので、距離を縮めるのは意外と簡単だった。なんとかパパと友達になって、今日の目的は達成されたのであった。




