第18話 ママと恋愛トーク
私はママの部屋に押し掛けた。
ママはベッドに寝転んでゲームボーイをやっていた。まったく兄妹そろって、ベッドでゴロゴロしやがってよ。自分が大人になると、子供に家でゴロゴロするなって説教するくせに……。大人って本当に自分勝手な生き物だよ。
今はそれよりも、ママの恋愛観について聞いてみよう。まずは情報取集が重要である。
「リコ、恋愛トークしようよ」
「いきなり、なんだよ。今忙しいから……」
「リコ、恋愛トークしようよ」
「………」
どうやら、ゲームに夢中で返事さえもしない。こういう所は私にそっくりだな。
しばらくして、ママは眉毛を顰めながら舌打ちをした。
「あっ、クソ……。死んだ、トキコが声をかけたからだ」
「はいはい、ごめんね。ちょっとゲームは休憩してさ、恋愛トークでもしようよ」
強引にでも情報を引き出すしかないので、無理やり恋愛トークに移行させるしかない。私はバカみたいな変顔をして、ママに興味を持つように誘導した。
「ほれほれ、恋愛トーク楽しいぞ~」
すると、ママは面倒くさいような顔で返事をした。
「分かった、分かったよ。なんだよ、急に恋愛トークって?」
「いやあ、お互いに乙女な年頃だからね。ズバリ、リコってどんな男がタイプなの?」
「うーん、サーファータイプとかかな? 身長が高くて、ワイルドで頼りがいがある男がいいな。デートはバッティングセンターとか行きたい」
なるほど、なるほど……。いや、なるほどじゃねーよ。パパの真逆の人間であり、何一つ当てはまる事がなさそうだ。だが、ここで諦めるわけにはいかないのだ。
なんとか、パパの良いところを一つで褒めてもらわないと……。
「ねえ、リコは文化系の男とかどう?」
「いや、ないな」
「じゃあ、リコはゲーム好きでしょ? ゲームがうまい男とかどう?」
「いや、ゲームって暇つぶしだしねえ」
「じゃあ、眼鏡男子とか? あとはクリエイター系の……」
しかし、ママは言葉を遮って、こちらにガンを飛ばしてきた。
「もう、イイって……。大体、何の意味があるんだよ?」
「いや、ないけどさ」
「なら、私はゲームの続きやるから……」
ママは再びゲームボーイに手を伸ばした。まあ、今日はこんなもんだろう。
私はパパの手紙を確認すると、夏休みの最後の日に告白したと記している。あの気弱なパパが何回も、女子に告白できるようなタイプには見えない。おそらく、チャンスは1回だけだ。しかも、これは何らかの奇跡が起きて、更に勇気も出せて告白出来たと思われる。
私の予想になるが、8月31日にまでパパが告白しないと、ゲームオーバーになるような気がする。それはパパがママに告白せずに、中学生活を終えて、私の存在も抹消される最悪エンディングだ。
もしそうなら、私に残された期間は約1か月半ってところだ。とりあえず、ママを学校に行かせて、パパと会うように工作しないとダメだ。まず会う機会がなければ、どんなイケメンでも付き合う事は不可能だ。
その為にも、ママと一緒に住んで行動を監視するのが一番だ。私はカイトに頼んで、夏休み中はココに下宿させてもらうように頼んだ。すると、サチ婆ちゃんの借りがあるので、なんとかしてやると約束してもらった。
だけど、パパとママを付き合わせるのは自分でやれとの事だ。よし、明日から頑張るしかないのだ。そう、自分の両親の恋愛を……。こんなことをする子供は私くらいのものだ。




