第14話 時間稼ぎはスキャンダルで
私は朝に目が覚めた。
どうやら、昨日はママの部屋で眠ってしまったみたいだ。まず、洗面所で顔を洗って、朝食を頂いて、ママの部屋でゴロゴロしていた。ママも家から出る気はないみたいだ。
お昼近くになると、私、ママ、カイト、キョウコお婆ちゃんの4人はリビングに集合していた。そろそろ、昼飯の時間であるのだ。
すると、キョウコお婆ちゃんが手を叩いた。
「そうだ、今日の昼はお寿司にしようかね。カイトも東京に行っちゃうし、送別会も兼ねて豪華に行こうかしら?」
ソファに寝転んでいたカイトはガッツポーズをした。
「イエッー、俺はウニとアワビ食べたいぜ」
すると、ママも喜んだ表情を見せた。
「うーん、アタシはいくら食べたいな。しかし、寿司屋なんて何年ぶりだろう?」
きっ、来た、この瞬間だ。サチ婆ちゃんは残念だけど、きっと死ぬ。だけど、それを知っているのは私だけだ。だけど、どうやって止める? 今日死にますとか言ったら、カイトやママにボコボコに殴られそうだ。
キョウコお婆ちゃんが口を開く。
「トキコちゃんも一緒に行こうね。遠慮しないでね」
「あっ、はい……、ありがとうございます」
すると、カイトが反論してきた。
「はあ? コイツに寿司奢るのかよ。おいおい、赤の他人だぞ?」
「あら、別にいいじゃないの。私がお金を払うわけだし、1人だけお留守番も可哀相でしょ?」
「ふーん、オフクロはなんかコイツに甘いよな。実は隠し子とかじゃないだろうな?」
「カイトは本当にバカな子ね。アンタこそ、女遊びを控えなさいよ。少なくても、近所の子に手なんか出さないでよ。そしたら、私は気軽に外出もできなくなるわ」
その言葉にカイトが動揺した。
「バッ、バカを言うなよ。そっ、そんな事をするわけないだろ?」
「なら、いいけどね……。もし、嘘だったら説教をするからね。とりあえず、みんな着替えたらリビングで待っていなさい」
すると、各自が部屋に移動した。今の話だが、カイトは近所の子に100パーセント手を出している。何故わかるかって? あの表情は女関係でマスコミにインタビューされた時と同じ表情だからだ。まったく、どうしようもない男だ。
私はママの部屋に入った。さて、これからどうする? このままだと寿司屋に行くことになる。なんとか、時間稼ぎをしないといけない。どのくらい時間稼ぎをすればいいのか?
それすらも分からない状態だ。腹痛でトイレに引きこもるのもアリだな。それでも、10分程度で限界を迎えそうだ。
そこにママが声をかけてきた。
「トキコ、アタシの洋服を貸してあげるよ。ちょっとだけ、サイズが大きいかもしれないけど、小さいよりはマシでしょ?」
そう言って、ママはポロシャツとデニムスカートを差し出した。
それよりも、今は時間稼ぎを考えないといけない。私はバッグの中身を見てみた。くそ、なんか使えるものがないのか? スマホ、携帯ゲーム、漫画、お菓子……。
おっ、これは若き日のカイトの写真ばかりを集めたアルバムだ。私が出版社にスキャンダル写真を売ろうしていたモノだ。もしかして、これは使えるかもしれない。
私はママにアルバムを見せた。
「ねえねえ、このアルバムの中に、近所の女の子っているの?」
「ふーん、兄貴のアルバムか……。どれどれ」
ママは何枚かページを捲った。
「あっ、近所のリカ姉ちゃんだ。バカ兄貴の奴……」
そう言って、指をさした写真を見ると、カイトが女子高生にキスをしている写真だった。ママはアルバムを持って、すぐに部屋を出て行った。私もその後を追いかけていった。
ママはキョウコお婆ちゃんのいるリビングに入った。
「お母さん、この写真見てよ。近所のリカちゃんだよ」
「リコ、カイトを呼びなさい」
「はい」
しばらくすると、ママがカイトを連れてきた。そして、キョウコお婆ちゃんはカイトに写真を手渡した。
「カイト、この写真に見覚えある?」
写真を見たカイトは信じられねえという顔をしていた。
「なんで、その写真が……」
「トキコちゃんがこのアルバムを見せてくれたのよ」
「なんで、その眼鏡が持って……」
だが、キョウコお婆ちゃんは言葉を遮った。
「そんな事はどうでもいいでしょ。あんたさぁ、リカちゃんまでに手を出して何考えているの? まだ、女子高生でしょ?」
「その時は俺も未成年だったもん」
「いいから、聞きなさい……」
それから、キョウコお婆ちゃんはカイトに説教を続けた。10分、20分、30分と時間は過ぎていった。カイトもあれやこれやと言い訳をするので、説教は延長していくのだった。
そして、50分が過ぎようとしていた頃に電話が鳴った。キョウコお婆ちゃんが説教を中断して電話をとる。急に顔色が変わって、何やら深刻な顔で頷いている。サチ婆ちゃんの危篤の電話を聞いているのだろう。
その姿を見るのは辛く感じた。しばらくすると受話器を置いた。
「みんな、サチ婆ちゃんが危篤みたい。すぐに病院に行くわよ」
こうして、私も含めて4人で病院に向かった。




