第10話 運命の出会い(ママの過去編)
アタシは神社の入り口の前に立つ。
入口の前には1000段の階段が見えて、その横の石碑には時空院転生神社と刻まれている。そういえば、中1の合宿の時はよくここに来たな。
運動部の間では地獄の階段って呼ばれていいて、よくハルミと一緒にココで走り込みしたな。レイカなんかは負けたら、すぐに泣いていたな。まあ、アタシが一番足速かったけどな。
あれから、もう3年も経つのか……。まさか、最後はあんな形で部活をやめるとは思わなかったな。アタシは目に溜まった涙をぬぐう。バカ、こんな事で泣くなんてアホらしい。それよりも、神社を目指して階段をのぼるとするか……。
ここから見える景色は最高にキレイだからな。アタシは階段をズンズンと登り始めた。いつも厳しいトレーニングをしていたので、余裕で頂上まで行くことができた。
だけど、頂上には先客がいたのだ。その男は房総中の制服を着ているので、同じ中学校の奴なのは間違いない。賽銭箱前の石段に座って、スケッチブックを持って、何かを描いているようであった。ここで、声をかけないと気まずい空気になりそうだ。ここは私だけの場所でもないしね。
仕方なく、アタシはそいつに近づいた。
「お前、房総中だよな?」
「ああ、うん」
ソイツの顔は童顔で、黒縁眼鏡をかけており、いかにも弱そうな男だった。何よりも覇気がなく、アタシの苦手なタイプであった。ちなみに、アタシはイケメンでワイルドな男が好きだ。芸能人だったら反町隆史とかね。
まあ、自己紹介くらいはしておくか……。
「アタシは竹ノ内リコだ。お前は?」
「俺はテッペイ……。時空院テッペイだ」
こうして、アタシ達は出会った。
アタシはテッペイと暇つぶしに会話をすることになった。驚くことに同級生であることが分かった。アタシよりも身長が低く、てっきり中学1年生だと思った。部活は美術部で部長をしているらしく、スケッチブックに漫画家になる為の練習をしているらしい。
アタシはどんな漫画を描いているのか知りたくなった。
「テッペイ、その漫画見せてよ」
「いっ、いいよ」
テッペイはスケッチブックを渡してくれた。そこには漫画のネームという設計図があって、内容はどうやら魔法少女の物語みたいだ。絵はそこそこで、幼稚園の頃に見たアニメにそっくりだった。
そして、やたらにパンチラシーンが多いけど、兄貴の漫画を借りて読んでいるから引きはしない。
「なんか、オタクっぽいな」
「まあ、オタク向けだし……」
「ふん、こんなの描いていて恥ずかしくならないの? パンチラ多いし……」
「いや、全然思わない。自分が描きたいから描くだけ」
エッチな男だけど、この言葉は心に響いた。
アタシもソフトボールが好きだから続けているだけだ。でも、ソフトボールが出来ない状態になってしまった。つまり、壁にぶつかったのだ。そうなると普通は諦めるか、頑張って続けるかの2つしかない。
テッペイはどう思っているのだろうか?
「なあ、漫画家になれなかったらどうする? なれない可能性もあるだろ?」
「俺は自分が納得するまでは続けるよ。そうしないと、後で絶対に後悔するから……。それは何でもそうだと思うよ」
これはテッペイの言う通りで、逃げたら絶対に後で後悔することは間違いない。アタシがそういう気持ちがあるのは、ソフトボールを続けたいということだ。そうだよ、こんな単純な事になんで気が付かなかったのだろう?
でも、ソフト部のみんなは許してくれないはずだ。あれほど、みっともない醜態を見せたので、部長としての尊厳はゼロだ。それに思い出作りの部活なんてしたくないのは変わらない。アタシは優勝するのが目的なので、みんなとは目指す方向が違うのだ。
現実的に優勝が目的の部員はゼロだし、諦めるしか選択肢がないだけだ。よし、迷いは消えて決心がついた。残りの中学生活は自由に生きてみよう。ソフト部だけが人生じゃない。
ちょうど、時刻も7時半を過ぎていたので、帰宅時間としては良いタイミングだ。
「テッペイ、そろそろ帰るわ。色々と話せて楽しかったよ」
「俺も漫画の評価してくれてありがとう。またね、竹ノ内さん」
「リコでいいよ。じゃあな」
「またね、リコ」
アタシはその場から立ち去った。
今日は誰かに話を聞いてもらいたかっただけだ。それが、たまたまテッペイだっただけだ。もう話す機会もないだろう。だけど、運命ってやつは分からないものだ。
だって、20年後にはテッペイと結婚していて、自分と同じ年齢の子供がいるのだから……。




