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第8話 天才と凡人(ママの過去編)

アタシはハルミに反論した。

「ハルミ、それ関係あるか?」

「うん、正直あると思う。みんな、リコがいきなり練習や言動が厳しくなったから、動揺を隠せない状態だよ。ちゃんと素直に話して、謝ればみんな分かってくれるよ。リコだって試合に出たいでしょ? ここは大人になろうよ」


確かにハルミの言う事は正しい。このまま部員が集まらなかったら、全国優勝どころではなく、試合に出られない状態になってしまう。納得のいかないことだが、結局は部員に頭を下げるしか方法がないのだ。


アタシはみんなに頭を下げる事を決めた。

「ハルミ、分かったよ。謝ればいいんだろ、謝ればさぁ」

「ありがとう、私も一緒に謝るよ」


先代の部長からアタシは新部長を任された。理由はソフトが一番上手かったのもあるが、嫌われ者になる覚悟があるからだそうだ。トップは嫌われて、孤独でないといけないと言われた。


部員に厳しくしないといけない立場なので、一番嫌われる役目が部長なのだ。ナンバー2の副部長はそのフォローをするのが仕事だ。つまり、部員に優しくする役目が副部長だ。


ハルミが部長になれなかった理由は分かる。性格がお人好しで優しすぎるのだ。もちろん、親友としては大好きだ。しかし、ハルミが部長になったら、ソフト部はふぬけ状態になるのが目に見えている。


やっぱり、アタシが部長として引っ張っていくしかない。

「じゃあ、ハルミ行こうか?」

「リコ、短気は起こさないでね」

「ふん、分かっているよ。もう14歳の大人だ」

アタシ達はみんなを説得するために部室へ向かった。


ハルミは部室の扉を開いた。アタシは中の光景を見て驚いた。数十人の部員が制服姿でお菓子を食べながら、床に座って楽しそうに談笑していたのだ。


まるで遠足のような光景なのに、副部長であるハルミは怒りもせずに口を開く。

「はーい、みんなリコを連れてきたよ」

その一言で、ガヤガヤしていた部員が静かになり、全員の視線はこちらへ集中した。


もはや腑抜けた部員に謝罪する気持ちより、激しい怒りが込み上げてきて、大声で怒ってしまったのだ。

「おい、お前ら早く着替えろよ。もう、試合まで1か月もない状態だぞ。サルみたいにバカ騒ぎしやがって……。やる気あるのかよ、バカ」


ハルミはアタシの腕を引っ張る。

「ちょっと、リコ落ち着いて……。ちゃんと話そうよ」

そこに雪代レイカが口を挟んできた。

「リコ、やめなよ」


雪代レイカとはソフトボール部の部員であり、クラスが一緒の同級生でもある。負けず嫌いな性格で、ロングのパーマに可愛い垂れ目が特徴的だ。ポジションはサードだが、控えのピッチャーも兼任している。


アタシとは小学校時代のソフトボールクラブでライバル関係であった。もし、アタシがいなかったら、部長もピッチャーもレイカがやっていたはずだ。ちなみに部活の練習メニューの方針で、何回も喧嘩になった事もある。もしかすると、このボイコットもレイカが関係しているのか?


眉を顰めたレイカは立ち上がって、こちらへ近づいてきた。

「ねえ、リコのそういう所だよ。いつも上から目線で偉そうに……。そういうのは嫌われるって、そろそろ気づきなよ」


アタシはその言葉に腹がたつ。

「アタシは部長だから、嫌われる覚悟はあるよ。それも、みんなの為を思ってのことだからね」

「ふっ、みんなの為じゃなくて、本当は自分の為じゃないの? いつも自分の目線で物事を進めているじゃない? だから、ついに今日で練習する人はゼロになったじゃない。この独りよがり」


その言葉にアタシはレイカの胸倉を掴んでいた。

「もう、1回言ってみろよ」

「ちょ、ちょっと苦しいでしょ……。りっ、リコ離してよ」

「おい、レイカ……。努力もしないで、言い訳ばかり並べるなよ」


そう言うと、レイカはいきなり目に涙を浮かべた。

「みっ、みんなさぁ……。みんながリコみたいに出来るわけじゃないからな。凡人の気持ちは絶対に分からないよ、特にリコみたいな天才には……」


アタシはレイカの胸倉を離した。なぜなら、あのプライドの高いレイカが、後輩の前で涙を流すとは信じられなかった。


すると、レイカが泣き叫びながら、逆にアタシの胸倉を掴んできた。

「ずっ、ずっと、私はリコよりも努力してきたよ。でも、努力だけはどうにもならない事が世の中にある。アンタにとって、当たり前の練習がさぁ、私らには出来ない……。その気持ちが分かるか? みんなリコを見ていると辛くなるんだよ。そう、自分達が無能な気がしてさ……」

そう言うと、レイカはその場に座り込んで、声を出して泣きだしたのだ。


しばらくしても、部室ではレイカが泣いており、誰も口を開かない状態になった。もしかして、みんなレイカと同じ気持ちなのかも……。アタシが勝手に全国優勝って盛り上がっていて、みんなはそうじゃなかったのかもしれない。


そうだとしても、優勝を目指して頑張ってきたはずなのに、この場に及んで弱音を吐くのはオカシイはずだ。いや、アタシがおかしいのか?

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