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第21話 三者面談のはじまり

私は不貞腐れながら口をとがらせた。

「そっ、そうやって怒られたら、怖くて萎縮して声なんか出なくなっちゃうよ」

ああ、ついに言ってしまった。早くも後悔し始めて、心臓の鼓動がバクバクと叫んでいるようだった。


でも、ママの機嫌はまだ大丈夫そうだった。

「アタシは別に怒ってないわよ。トキコの事を心配して言っているだけでしょ? それより、三者面談ではちゃんとハキハキ話してね」

もう、ユキちゃんの前で怒るのは勘弁してくれ。恥ずかしくて死にそうだよ。


私はますます萎縮して、自分で自分の声が震えているのが分かる。

「わっ、分かっているってば……。でも、だけどさぁ……」

「ほら、ボソボソと喋るじゃない?」

「ちっ、違うもん、それは……」

「何が違うの? ハッキリ言ってよ」


あきらかにママに機嫌が悪くなり、険悪な雰囲気になったのが分かる。ユキちゃんと比べたママが悪い。私は悪くない、悪くない、悪くない……。そこに、ユキちゃんが仲直りの仲裁をしてきた。


おそらく、気を使ってくれたのだろう。

「トキコ、リコさん。じゃあ、私はそろそろ部活に行きます。あとで顔を出してくださいね。それと、2人とも仲良く三者面談してくださいよ。怒ると美人がだいなしですよ」

「フフフ、ユキちゃんから頼まれたら仕方ないね。じゃあ、またあとで」

「はい、よろしくお願いします」

そう言って、ユキちゃんは敬礼のポーズをしながら消えていった。


一方のママの機嫌はすっかり良くなっているようだった。ユキちゃんは世渡りが上手くていいなあ。それより、今日は三者面談が終われば帰宅するだけで、この極地を乗りければ夏休みが待っている。私だって頑張ればなんとかなるはずだ。


そこに真木先生が教室に入ってきた。

「久しぶりだな、竹ノ内リコ。いや、今は結婚して、時空院リコだったな?」

「真木先生、お久しぶりです」

「まさか、親子で担任になるとは思わなかったよ。お前が卒業してから、もう20年だ。俺は白髪が増えたオジサンになったよ」

「まだまだ若いですよ。お変わりないですよ」


真木先生は照れながら頭を掻く。

「あのリコがお世辞まで使うようになったか……。時代の流れを感じるよ。まあ、こんな大きな子供がいるから当たり前だな。しかし、こんなに落ち着くとは思わなかったよ。中学時代のお前は反抗期の塊だったぞ?」

「アハハ、トキコの前でそんな話をするのは止めてくださいよ。恥ずかしいので……」

「アハハ、すまん、すまん」


真木先生は40代後半の男性教諭であり、ママの中学時代の担任であったらしい。担当科目は数学だが、体育教師にも見える体格をしている。ママの話によると当時は熱血教師で、生徒に恐れられていたり、慕われていたりと人気があったらしい。


私はなんか苦手なタイプであり、あまり関わらないように学校生活を送っていた。


真木先生が椅子を差し出してきた。

「とりあえず、2人共座りなさい」

「はい、今日はよろしくお願いしますね。ほら、トキコも挨拶しなさい」

「よっ、よろしくお願いします」


こうして、最悪の思い出になる三者面談が始まったのである。私の横にはママが座っており、目の前の机を挟んで、真木先生がいる状態だ。なんか、動物園の檻に入った気分だ。机の上には成績表らしきものがあり、これを誤魔化さないといけないのだ。


まずは真木先生が軽く頭をさげた。

「では、三者面談を始めます。よろしくお願いします」

そう言うと、ママもペコリと頭を下げる。

「よろしくお願いします。先生、トキコの成績はどうでしょうか?」

真木先生、期末テストの件には触れないようにお願いします。神様お願いします、お願いします、どうか今回はお許しください……。


すると、真木先生は眉毛を顰める。

「まあ、正直に言うとかなり悪い。だから、入れる高校は少ないぞ。私立の足立高校なら入れると思うぞ」

私立足立高校とは偏差値45で名前を書くだけで、誰でも入れると言われている学校だ。


なので、必然的に千葉の不良達が集まるのだ。別名がアルカトラズ島と呼ばれているので、私の大好きな少女漫画みたいな青春が絶対に送れない場所だ。正直言えば行きたくない。しかし、努力できない人間の選択肢というのは、いつだって消去法しかないのだ。


だから、私は足立高校でいいのだが、それに不満なママが先生に食いつく。

「ウチはそんな余裕もないので、公立に行かせたいのですけど……。今から一生懸命勉強したら、ワンランク上の高校に行けそうですかね?」

「うーん、期末テストが相当酷かったからな。正直言えば、かなり厳しい状態だな。リコは期末の成績見たのか? あれを見る限りではどうにもならないな」


真木先生のバカ野郎、期末テストの話なんかすんじゃねーよ。私はママには期末テストなかったってウソついているのだ。ああ、どうやって誤魔化せばいいのだろう? 


私は正直に言っておけばよかったという後悔が込み上げてきた。

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