第17話 ママが泣く
カイトはお茶に口をつけると、先程と変わって神妙な顔つきになった。
「そういえば、サチ婆ちゃんの命日が近いな。リコは覚えているよな?」
「うん、覚えているよ。私が中三の夏休みに入ってすぐ死んだからね。あの時、死に目に会えなかったのは後悔しているよ。余命1年とは聞いていたけどさ、あんなに早く死んじゃうと思わなかったよ」
「だな、俺も死に目に会えなかったのは後悔しているよ。また、墓参りに行こうな。死ぬ前には俺達に会いたかっただろうな。サチ婆ちゃんは寂しがり屋だったからな……」
「うん、分かっているよ……」
ママの目には涙らしきモノが見えて、声が少し震えている気がした。もしかしたら、ママのお婆ちゃんが死んだ時を思い出しているのかもしれない。つまり、私にとっては曾祖母になる。もちろん、その頃は生まれてないので、よく分からない。
それから、カイトが溜息をついた。
「くそ、家族で外食しなければ間に合ったのに……。オフクロが珍しく、寿司屋に連れて行ってくれたからな。だから、よく覚えているよ。あの時に携帯が普及してればな……。家で病院からの留守電を聞いて、駆け付けたけど間に合わなかったな。でも、過去を後悔しても仕方ないけどな。結局は間に合わなかったのが結果だ」
ううっ、凄く重い話だ。だけど、私は曾祖母については何も知らないので、何の感情も沸かないのは当たり前だ。しかし、ママは目に涙を浮かべていた。その姿に心臓を握られたような気分になった。
ママがこんな表情をするのは初めてであり、見てはいけないものを見てしまった気がして、心臓の鼓動がバクバクとしていた。その時、ママがこちらを振り向いて、私と目が合ってしまう。
すると、ママが小声でつぶやく。
「トキコ、暗い話なんかしてゴメンね、ゴメンね……」
私は無言で首を振った。
うーん、何か食卓の雰囲気が重くなってきた。しかし、親が泣いている時って、どうすればいいか分からない。慰めたらいいのか、何か行動したらいいのか……。でも、そうすることで、余計に悪化するような気もする。
私の身体は冷凍ミカンのようにカチコチ状態になった。つまり、一歩も動けない状態だ。ただ、時間を過ぎるのを待つしかないと判断したのだ。
何故か親が泣くと、子供は罪悪感のようなものを感じるのだ。




