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第16話 カイトの説教

すると、キッチンにいるママがフォローをしてきた。

「兄貴、変な事を吹き込むのはやめろよ。トキコはまだ子供だよ」

「でもよ、もう中学の3年だろ? 俺は煙草も酒もやっていたし、毎日ナンパに明け暮れて、楽しい中学生生活だったぞ」

「いやいや、兄貴が特殊すぎるだけだよ。それより、早く飯を食べなよ。兄貴の大好物のカレーだよ。こっちのテーブルの用意しておくよ」

そう言って、カレーをカイトに見せた。


すると、カイトはニッコリとした表情になる。

「おっ、旨そうだな。リコの料理は旨いからな」

「当たり前だよ、お母さん仕込みだもの」


カイトはキッチンの近くまで移動して、料理が用意してあるテーブルの前に座った。私とママも続いて座ると、3人でカレーを食べ始めた。カイトはパパを待つほど、お人好しタイプでもない。それにどこか、パパを見下しているのだ。


そのカイトはカレーを口に頬張りながら話す。

「ところで、リコはテッペイとうまくやっているのか?」

「うん、それなりだよ。20年以上も一緒にいるって事はうまくいっていると思うよ。兄貴は結婚しないの? もう、こりごりって感じ?」

「俺は1回失敗しているから、次は慎重になりたいのさ。まあ、婚活は適当にやるさ。あとな、金は困っていたら相談しろよ。俺がトキコの学費くらいは出してやるからな。将来は大学とか行くだろ?」

「さあ、まだ高校も決めてないから、この子は……」


ママとカイトが一斉にこっちを見てきた。私の話題なんてどうでもいいのに……。ああ、多分説教になりそうな雰囲気だ。食事時の説教は本当にやめてくれ。


そして、私の思った通り、カイトが説教を始めやがった。

「トキコ、来年は受験だろ? 志望高校を決めてなくて大丈夫なのかよ?」

「まあ、大丈夫だよ。だって、私の学力で入れる所を選ぶだけだもん。まあ、適当にやるよ」


そう、私は高校を選べるほど選択肢がないので、名前が書ければ入れる私立高校に行くだけだ。そこの高校は荒れているらしいけど、頭が悪いから仕方ない。選択肢は一つだけだ。だから、家族や先生と相談しても意味がない。だって、バカだもん。


しかし、カイトはその考えに真っ向から反対した。

「おいおい、適当に決めると、後で後悔するだけだぞ? もっと真面目に考えろよ、自分の人生だろうがぁ。社会に出たら、適当は許されないぞ」


ふん、自分の婚活は適当にやるとか言っておいて、人が適当って言うと文句をつけるのかよ。これだから、大人って卑怯だから信用出来ない。このままだと、説教モードでカレーが不味くなりそう。


しかし、ユキちゃんもカイトもみんな説教が大好きで嫌になる。日本人って世界でも、ダントツで説教が好きな気がする。テレビでも学校でも人に文句をつける人ばっかりだ。ああ、今日は説教の2連発で憂鬱な気分になるよ。そんな事を考えていると、パパがリビングに入って来た。


何も事情を知らないパパの表情はたるんでいる。

「どうも、義兄さん来ていらしてたんですか?」

「おう、テッペイか……。相変わらず、冴えないオタクオーラが凄いな。そのむさ苦しい髪を切れよ、不審者に見えるぞ。ガハハハ」


むっ、別に髪型なんてどうでもいいでしょ。パパは長くても、短くてもダサイだもん……。だけど、真実だから辛いね、トホホ。しかし、説教の対象は私からパパに移りそうだった。私はパパに感謝の念を送った。


それにしても、パパも言い返せばいいのに、媚びたような表情でカイトの横に座った。

「えへへ、義兄さん勘弁してくださいよ」

「どうやら、新作の小説は売れてないみたいだな。妹のリコに負担を与えるなよ」

「えへへ、義兄さん勘弁してくださいよ」

「悔しかったら、俺のように稼いでみろよ。嫁や子供に良い生活をさせてやるのが、父親の一番の仕事だと思うぜ。 今はリコの稼ぎがいいから、生活が成り立っているだけだろ? 俺が言っていること間違っているか?」

「えへへ、義兄さん勘弁してくださいよ」


パパはRPGゲームの村人のように、同じようなセリフしか言わない。おそらく、カイトにビビっているのだ。以前も説教をされて、怒鳴られて、それがトラウマになっているのかもしれない。


カイトもそう思ったらしく、パパの頭にツッコミを入れた。

「おめえはオウムか? しっかりしろよ、今年で35歳だろうがぁ。それに別に怒ってねえし、会話くらいはちゃんとしろよ。家族だろうがぁー」

「うぐ、痛ってて……。すいません、次の新作で頑張るつもりです。内容は無職の主人公がトラックに撥ねられて、戦国時代に転生して、沢山の姫に囲まれたハーレムもので、現代の知識を生かして天下統一をする話です。メインヒロインはツンデレにするので、若者に人気が出る事は間違いないです。それと、主人公の能力をチートにして……」


パパが早口で喋りだすが、カイトが言葉を遮った。

「あっー、もういいや。お前の言っている事がひとつも分からねえ。とりあえず、売れるように努力しろや。男は稼いでナンボだぞ。分かったら、返事しろや?」

「はっ、はい……」

まるで、いじめっ子といじめられっ子のような関係である。


親のこういう部分は見たくないのが子供の本音である。でも、大人の世界は金が持っている方が正義である。


すると、ママがパパを庇い始めた。

「兄貴、そんな所で勘弁してやってよ。子供の前でさ、金の話なんかしないでくれよ」

「だけどよ、トキコの将来の事もあるだろ? まあ、金とか人脈で困った事があったら、いつでも相談してくれよ。これでも、色々なところにコネがあるからよ」

「ありがとう、兄貴。まあ、私はトキコが元気で健康ならそれでいいよ。それより、カレー食べようよ。早くしないと、冷めちゃうからさ」

「そうだな、とりあえず食べるか」


4人はテーブルを囲んで、カレーをモグモグと食べる。とりあえず、私はカイトの説教から逃げられたので良かった。こうやって、ドンドンと会話が違う方向に行ってくれるのはありがたい。


そしてカレーを食べ終えると、ママがお茶を持ってきてくれた。

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