第13話 パパ登場
室内は本棚に囲まれており、小説家の部屋に見えてない事もない。
だが、書籍のほとんどは漫画であり、他にも沢山のフィギュアやゲーム機器がビッシリと置いてある。テレビのニート特集でインタビューを受けていた人も、こんな感じの部屋だったな。もちろん、その人もパパと同じ匂いがしたのだ。おそらく、オタクって人種だ。
一番奥の椅子に座っている部屋の主が振り向く。黒縁メガネ、小柄で細身の体格、首元がユルユルのTシャツを着こなす男。これが、私のパパである。
そのパパは覇気のない笑顔を作る。
「やあ、トキコどうした? パパは仕事中だよ。何か用かい?」
「いや別に……。ただ、ママが7時頃に夕飯だってさ。私はちゃんと伝えたから、時間になったら降りて来てよ。そうしないと、私が怒られるんだからね。じゃあね」
これで、私の仕事は終わりだ。後は部屋でゴロゴロするだけだ。
そして、部屋を出ようとするとパパが声をかけてきた。
「おっと、ちょい待ち。これを持っていていいよ。ファイナルファンタジー好きだっただろ?」
パパの手にはファイナルファンタジー7のソフトが握られていた。
私はファイナルファンタジーが大好きだ。魅力的な主人公が大冒険をして、ワクワクして感動を与えてくれるからだ。シリーズが出る限りは死ぬまで買うつもりだ。
私はパパからソフトを受け取った。
「えーと、ファイナルファンタジーの7作目だっけ?」
「そう、パパが中学校の時にハマったやつだよ。20年前の作品だけど、ストーリーが凄く面白いよ。プレステも貸してあげるからやりなよ」
正直、パパとは趣味が合いすぎる。ファイナルファンタジー7は名作でいつかはプレイしたいと思っていたのだ。だから、これは正直に嬉しいのだ。
「パパ、ありがとう。暇な時間にやってみるよ。20年前は初期のプレイステーションの全盛期だった頃だよね。その頃にママと出会ったんだよね?」
「ああ、中学3年の最後の夏休み前だったな。それまでは、クラスも別だから話した事もなくてね。あれはママが体育祭の応援団に決まった時だったかな? 応援の旗を作るのに美術部だったパパを訪ねたのがきっかけだったなあ」
何度も聞いた話だが、この出会いを潰しておけばなあ……。そしたら、パパのオタクの遺伝子を受け継がなかったはずだ。しかし、ママはパパの何処に惚れたのか?
私はパパをマジマジと見る。顔は不細工ではないが、眼鏡を掛けているオタク顔であり、お人好しの人畜無害な雰囲気が出ている。さらに身長は低く、細身でいかにも戦闘力がなさそうに感じる。
町中で前から歩いて来たら、こっちから避ける気がなくなる風貌であると言えば分かりやすい。つまり、人に舐められやすい人間なのである。ああ、私にそっくり過ぎて辛いよ。なんで、私って舐められるのだろう? パパと同じで眼鏡? チビ? 弱そう? 運動部に入ってないから?
ああ、いつも考えるが答えは闇の中に消えていく。まあ、いいや……。私は用件を伝えたので、プレステとソフトを持って部屋を出ようとした。
そこで、パパが声をかけてきた。
「トキコ、ちょい待ち。攻略本もあるから持っていきなよ」
「ああ、ありがとう」
私はボロボロの攻略本を受け取って部屋を出た。
フフフ、昔の攻略本ってなんかいいよね。色々なイラストや、開発者の内輪話とか知れて楽しい。今はネットの時代だから、昔よりも攻略本も減っているのだ。とりあえず、今年の夏休みはレトロゲームに青春を注ぎ込もう。
私は自分の部屋に入った。6畳の部屋には小学校の頃から使っている学習机とベッドがあり、本棚には大量の漫画とゲームソフトが置いてある。この辺はパパの部屋と代わり映えのない感じだ。10代の少女と30代のオッサンの部屋が同じってヤバいね。
話は変わるが女子中学生といえば、明るくて派手ファッションを好む子が多い。しかし、私の部屋にある服はほとんど黒が多い。黒は痩せて見えるし、全身黒のファッションを見て、凄くカッコいいと思ったからである。
それにパリコレのモデルは黒のファッションが多いもん。だけど、ママにはカラスみたいと言われて、傷ついたのは最近のことだ。もっと季節にあった色使いをして、オシャレを楽しんだ方がいいとアドバイスをされたのだ。
しかし、逆にパパの評価は高く、全身黒ならシルバーアクセサリーが似合うと、十字架のネックレスをくれたのでたまに付けている。おそらく、ママのセンスが世間の常識である事くらいは分かる。だが、パパのセンスをカッコいいと思う自分がいるのも事実である。おそらく、見えている世界が違うのだ。
それよりも、夕飯まで1時間もあるし、ファイナルファンタジーの攻略本でも見て時間を潰すことにした。
私はベッドに寝転んで攻略本をペラペラとめくって呟く。
「ふーん、これは売れるわ。キャラも可愛いし、雰囲気もいい感じだなあ」
んっ? 攻略本にしおりのようなものが挟まっていた。どうやら、普通の封筒みたいだ。




