第9話 くだらないプライド
私は過去を思い出して感情を露わにしてしまう。
そして、ベンチから立ち上がり、ユキちゃんを見下ろして声を荒げる。
「なっ、何でもできるユキちゃんには、私の気持ちなんて絶対に分からないよ。だって、私には何の取り柄もないし、モヤモヤして卒業していく運命しかないもん。もう、どうにもならないよ」
「まだ、半年もあるし、何かやればいいでしょ? 私はトキコの漫画をまた見たいな。なんか、久しぶりに描いてみてよ」
「かっ、簡単に言うけど、高校受験もあるし、1作品描くだけで夏休みが終わっちゃうよ。それに私の才能じゃ描いても、無駄な時間を使うだけだよ。なっ、なら、最初からやらないほうがいい」
自分で声が震えているのが分かる。メッチャ早口で、まるで小さな子供のように喋っているようだ。ユキちゃんに図星を突かれて、自分に余裕がないのが自分で分かるのが辛く、額の冷汗が止まらないのだ。
おそらく、ユキちゃんのアドバイスは正しいが、私は何かに挑戦する気にはなれない。
だって、あの時みたいにみたいに傷つきたくない。ソフトボールクラブに入った時に、キャッチボールも出来ないと分かった時のチームメイトの目を思い出した。それは落第者を見る憐みの目だ。あんな目で見られたら、もう立ち直れない気がする。
しかし、ユキちゃんが溜息を吐くように追い打ちをかけてきた。
「ねえ、中学校生活で一生懸命になった事って何かあった?」
「いや、ないよ。それってないといけないの? ないと死ぬの?」
「別に死なないけど……。何か最近はイライラしているみたいで心配だからさ。何かに思い詰めているのかなと思っただけだよ。それに、私達もいつまでもつるんでいられないしね。親友として、トキコが純粋に心配なだけだよ」
そう、ユキちゃんも高校は別になる事を分かっているのだ。だから、あやふやな私に喝を入れてくれているのだ。それは親友だと思ってくれているからだし、本当にありがたい言葉だ。
すると、悲しそうな目でこっちを見る。嫌だ、嫌だ、ユキちゃんだけには同情はされたくない。友達としては対等だと思っているのに、そんな顔をしたら涙が出そうになるじゃないか……。
だけど、ユキちゃんはいじわるで言っているわけじゃなく、本当に心配で言ってくれているのだ。だからこそ、余計に辛くなってしまうのだ。優しさが残酷なパターンもあるのだ。もうだめだ、今日は帰ろう。
このままだと喧嘩になりそうだ。いや、本音は涙だけは絶対に見せたくないからだ。そこが私のくだらないプライドである。そう、人に同情されるのが大嫌いなのだ。




