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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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88/98

88話

翌朝。


暁は目を覚ます。

いつものように恒一へ抱きついている。


「……」


そして昨夜の違和感を思い出した。


「恒一」


「ん……?」


「昨日、契約が反応した」


恒一が目を開ける。


「何?」


「一瞬だけ」


暁は自分の手を見る。

契約の紋様は消えている。


「外から干渉された可能性がある」


「敵か」


「たぶん」


恒一が起き上がる。


「協会に連絡するか?」


「する」


だが暁は恒一の服を掴んだ。


「ただ」


「ん?」


「一人では行くな」


恒一が少し驚く。


「分かった」


「絶対に」


「分かったって」


「……約束」


暁は真剣だった。

恒一は少し笑って。


「ああ。約束する」



その日の学校。

二人はいつも以上に警戒していた。


昼休み、屋上。

彩音たちにも昨夜のことを話す。


「契約そのものを狙ってるってこと?」


彩音が聞く。


「可能性はある」


暁が答える。


「でも、なんで二人の契約を?」


鬼塚が聞く。

恒一が説明する。


「俺たちの契約は普通とは違うらしい」


「つまり」


玲司が言う。


「二人が離れると弱くなる?」


「そうとは限らない」


暁が答える。


「むしろ逆だ」


「逆?」


「私と恒一の繋がりが強くなるほど、契約も強くなっている」


彩音が暁を見る。

そしてニヤッと笑う。


「じゃあ最近の甘えっぷりって、結構意味あるんじゃない?」


「……」


暁が黙る。

恒一も少し気まずそうにする。


「まあ……そうかもな」


「ほら!」


彩音が笑う。


「夫婦みたいになってきたと思ったら、契約まで強くなってるじゃん」


「夫婦ではない」


暁が即答する。

だが少し嬉しそうだった。



放課後。


恒一と暁は一緒に帰る。

いつもの道。

いつもの距離。


だが今日は少し違った。

暁が手を差し出す。


「……」


恒一が見る。


「どうした?」


「手」


「繋ぐのか?」


「うん」


恒一が手を取る。

ぎゅっ。


暁は少し安心した。


「これでいい」


「何が?」


「約束を守ってる感じがする」


恒一は何も言わない。

ただ手を離さなかった。



夜。


いつものベッド。

暁は恒一に抱きつく。


「今日もか」


「約束したから」


「何を?」


「離れないって」


恒一は少し笑う。


「そうだったな」


暁は目を閉じる。

そしていつものように恒一の胸元に顔を埋める。


「恒一」


「ん?」


「もし明日、何かあっても」


「何もない」


「それでも」


暁は少しだけ強く抱きしめる。


「私が守る」


恒一は暁の頭を撫でた。


「俺も守る」


「……うん」


その瞬間。

二人の契約の紋様が今度ははっきりと光った。

二人とも気付いていない。


しかし遠く離れた場所では、黒峰がその光を感じ取っていた。


「……完成に近付いている」


黒峰は笑う。


「ならば」


「明日だ」


二人の約束が戦いの始まりを告げることになるとは、まだ誰も知らなかった。

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