85話
休日。
珍しく二人とも予定がなかった。
朝から家でのんびりしていたが、昼頃になると恒一が立ち上がった。
「ちょっと買い物行くか」
「行く」
暁もすぐに立ち上がる。
「まだ何も言ってないぞ」
「一緒に行く」
「そうか」
もう慣れている。
二人で家を出る。
駅前は休日ということもあって、人が多かった。
「混んでるな」
「そうだな」
歩いていると後ろから人がぶつかってくる。
「危ない」
恒一が暁の手を掴んだ。
そのままぎゅっ。
手を繋ぐ。
「……」
暁が固まった。
「逸れると面倒だから」
恒一は何気なく言う。
「……うん」
暁は俯いた。
顔が熱い。
ただ手を繋いでいるだけ。
なのに心臓がうるさい。
歩き始める。
しばらくして人通りが少なくなった。
それでも恒一は手を離さなかった。
暁も何も言わない。
むしろ少しだけ握り返す。
「……」
恒一が見る。
「どうした?」
「何でもない」
またそれだった。
だが今度は恒一も追及しなかった。
買い物を終える。
帰り道。
もう人は少ない。
手を繋ぐ理由もない。
それでも二人の手は繋がったままだった。
暁は少しだけ考える。
「恒一」
「ん?」
「もう人いない」
「そうだな」
「……」
「……」
それでも離れない。
暁が少しだけ握る力を強くする。
恒一もそのまま歩く。
「このままでいい?」
暁が小さく聞いた。
恒一は少し驚いた。
だが。
「別にいいぞ」
その答えに暁の表情が明るくなる。
「そうか」
それから家までずっと手を繋いだままだった。
夜。
いつものベッド。
暁は恒一へ抱きついている。
そして今日はさらに手まで繋いでいた。
「……」
恒一が苦笑する。
「今日はずいぶん甘えるな」
「今日だけじゃない」
「そうだったな」
暁は嬉しそうに目を閉じる。
「これも落ち着く」
「手を繋ぐのが?」
「うん」
少し間を置いて。
「恒一と繋がってるのが」
恒一は何も言わなかった。
暁も恥ずかしくなって顔を隠す。
それでも手は離さない。
やがて二人とも眠りにつく。
翌朝。
目を覚ました恒一が気付く。
昨日繋いだ手。
寝ている間もずっと繋がったままだった。
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