83話
翌朝。
恒一は目を覚ました。
いつも通り暁が抱きついている。
もう驚かない。
「暁、起きろ」
「……ん」
暁が目を開ける。
「おはよう」
「おはよう」
いつもの朝。
ただ今日は恒一の方が少しだけ違った。
昨夜、ふと思ったのだ。
いつも暁に甘えられている。
だったら自分から少しくらい甘えてもいいんじゃないか。
そう思った。
朝食を終え学校へ行く準備をしている時。
「暁」
「何だ」
恒一は暁の頭に手を置いた。
「……」
撫でる。
暁が固まった。
「どうした?」
「……何でもない」
明らかに動揺している。
恒一は少し笑った。
「嫌だったか?」
「違う」
即答。
「ならいい」
もう一度撫でる。
暁は完全に固まっていた。
耳まで赤い。
「……恒一」
「ん?」
「急にどうした」
「いつもお前が甘えてくるから」
「……」
「たまには俺からもいいかなって」
暁は何も言えなくなった。
嬉しい。
ものすごく嬉しい。
けれど恥ずかしい。
学校、昼休み。
屋上。
彩音が暁を見る。
「今日なんか機嫌良くない?」
「そうか?」
「うん」
鬼塚も見る。
「朝から顔が緩んでるぞ」
「緩んでない」
玲司が笑う。
「神谷に何かされた?」
暁は黙った。
「……頭を撫でられた」
全員が沈黙。
「それだけ?」
彩音が聞く。
「それだけ」
「それだけでその顔?」
暁は答えられない。
そこへ恒一が戻ってくる。
「何の話?」
「秘密」
彩音が答える。
恒一は首を傾げた。
放課後。
帰り道。
暁はいつも以上に恒一の近くを歩いていた。
そして何度も恒一を見る。
「どうした」
「何でもない」
「今日そればっかりだな」
暁は少し考え。
「……もう一回」
「何を?」
「朝の」
恒一が理解する。
「頭?」
「うん」
恒一は少し笑った。
そして暁の頭を撫でる。
「これでいいか?」
「……うん」
嬉しそうだった。
家に帰る。
夕飯、風呂。
そして夜。
いつものベッド。
暁は恒一へ抱きつく。
「今日もか」
「嫌?」
「嫌じゃない」
暁は安心する。
しばらくして。
「恒一」
「ん?」
「もう一回」
「何を?」
「頭」
恒一は少し呆れながらも。
暁の頭を撫でた。
暁は目を閉じる。
幸せそうだった。
そしてしばらくして、今度は恒一が暁の肩へ少し寄りかかる。
「……」
暁が目を開ける。
「どうした?」
「眠い」
「そうか」
恒一はそのまま暁へ寄りかかった。
暁は驚きながらも嬉しそうに笑う。
「……甘えてる?」
「少し」
その一言だけで暁の顔がまた赤くなる。
「……もっと甘えていい」
「じゃあ寝る」
「うん」
二人はそのまま横になる。
いつもは暁が恒一に抱きついて眠る。
今日は恒一も少しだけ暁に寄りかかっていた。
暁は嬉しくてそのまま恒一を抱きしめる。
「おやすみ」
「おやすみ」
今まで一方的だった甘え方が少しずつ変わり始めていた。
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