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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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81/91

81話

翌朝。


恒一は暁を見ていた。

いや正確には、見ないようにしていた。


「……」


しかし気付けば見ている。

暁は普通だった。


朝食を食べて学校へ行く準備をしている。

いつもの暁、何も変わらない。

変わったのは恒一の方だった。

昨夜のことを知っている。


寝言。


『恒一……』


『好きだから……』


あれを聞いてからどう接すればいいのか。

少し分からなくなっていた。


「何だ」


暁が言う。


「ん?」


「さっきから見るな」


気付かれていた。


「見てない」


「見てた」


即答。

誤魔化せない。


「何か変だぞ」


「別に」


完全に怪しい。

暁は首を傾げた。


何かあった、絶対に。

だが理由が分からない。


学校、教室。


恒一は席に座っている。

暁が近付く。


「恒一」


「何だ」


「本当に何でもないのか」


「何でもない」


「そうか」


納得していない。

完全に。


昼休み、屋上。

彩音が二人を見ていた。


「何かあった?」


「何もない」


恒一と暁が同時に答える。

少しだけ沈黙。


「何かあったでしょ」


「ない」


また同時。

彩音は笑った。


「怪しい」


鬼塚も頷く。


「今日は二人とも変だな」


玲司は少し考えている。

恒一の様子。

暁の様子。

そして何かを察したように笑った。


「まあ、そのうち分かるんじゃない?」


「何が」


恒一が聞く。


「別に」


玲司も誤魔化した。



放課後。

帰り道。


いつもの二人。

だが今日は少し空気が違う。

暁は恒一を見ている。

恒一も気付く。


「何だ」


「何でもない」


「なら見るな」


「恒一も見てる」


言い返せなかった。



家。

夕飯、風呂。

そして寝る時間。

いつものベッド。


暁が隣に入る。

恒一は少し緊張していた。


いつもならここで、抱きついてくる。

そして。


「……」


やっぱり来た。


ぎゅっ。


いつものように当然のように抱きつく。

しかし今日は違う。

恒一が妙に意識してしまう。


温かい、近い、柔らかい。

そんなことを考えてしまう。


今まで全く気にしていなかったのに。


「……」


眠れない。

暁の寝息が聞こえる。

どうやら本人はすぐ眠った。


いつも通り安心しきっている。

恒一は天井を見る。


そして昨夜の寝言を思い出す。


好き。


あれは本当に寝言だったのか。

いや寝言で言うほど、普段から考えていることなのだろう。


思い返す。

最近の暁。

自分に抱きついて寝る。


学校でも隣。

休みの日も一緒。

他の女子が近付くと不自然に間へ入る。

腕を掴む。

服を掴む。


全部。


「……分かりやすすぎるだろ」


小さく呟く。

暁は眠っている。

聞こえていない。

恒一は少しだけ横を見る。


寝顔、無防備。


そして自分に抱きついたまま。


「……」


意識してしまう。

今までと同じ光景なのに全然違って見える。

好きだと言われたから。

正確にはまだ直接言われてはいない。

でも聞いてしまった。


だから。


「どうすればいいんだよ」


恒一は小さくため息を吐いた。

答えは出ない。


その夜。

恒一は暁に抱きつかれながら、ほとんど眠れなかった。

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