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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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79/89

79話

雪華が来てから数日。

暁は少し考え事が増えていた。


理由は一つ。

あの日の質問。


『なぜそこまで人間に執着する』


答えはある、分かっている。

だが改めて言葉にすると恥ずかしい。



学校、昼休み。

屋上。


「最近静かだな」


鬼塚が言う。


「考え事してるからね」


彩音が即答した。

本人は否定しない。

実際その通りだった。


「何考えてるんだ」


玲司が聞く。

暁は少し考えた。


そして好きとは何かと言った。

全員吹き出した。


「今さら!?」


彩音が叫ぶ。


「もうそこは終わっただろ!」


鬼塚も笑っている。

玲司は机に突っ伏した。

氷室は静かにお茶を飲んでいる。


「違う」


暁が言う。


「好きなのは分かる」


「じゃあ何だよ」


鬼塚が聞く。

暁は少し迷った。


そして小さく言った。


「どこまで好きなのか」


静かになった。

今度は誰も笑わない。


それは意外と重い話だったからだ。



放課後。

帰り道。


恒一と暁のいつもの二人。


「どうした」


恒一が聞く。


「何が」


「今日は静かだ」


鋭かった。

最近ずっと一緒にいるだから変化にも気付く。

暁は少し考えた。


そして。


「何でもない」


とだけ答えた。

まだ言えない。



夜、家。

寝る時間。


いつものベッド。

最近ではもう説明不要。


自然に隣へ。

自然に抱きつく。

自然に落ち着く。

全部当たり前。


「恒一」


「ん?」


「もし」


少し迷う。


だが結局言葉を変えた。


「大切な人が危険になったらどうする」


恒一は即答した。


「助ける」


迷いもない。

暁は少しだけ嬉しくなった。


そして思った。

自分も同じだ。

恒一が危険なら助ける。

何があっても。

誰が相手でも。

絶対に。


その時だった。


窓の外。

微かな妖気。

暁が反応する。

一瞬で起き上がる。


「?」


恒一も気付く。

二人は外へ出た。


家の裏。

そこにいたのは雪華だった。


「またお前か」


恒一が言う。

雪華は無視した。

見ているのは暁だけ。


「答えは出た?」


突然だった。

だが暁には何のことか分かった。


あの日の質問。

なぜそこまで執着するのか。

雪華は答えを聞きに来たのだ。


数秒、沈黙。


そして暁は小さく息を吐いた。

恥ずかしい。

かなり恥ずかしい。


だが逃げる気はなかった。


「好きだから」


雪華が目を見開く。

恒一も少し驚く。


だが暁は続けた。


「一緒にいたい」


「守りたい」


「取られたくない」


そこまで言って少しだけ俯く。

耳が赤い。

かなり恥ずかしいらしい。

雪華はしばらく黙っていた。


そして小さく笑った。

本当に小さく。


「そう」


それだけだった。

否定もしない。

馬鹿にもしない。


ただ納得したような顔だった。


「変わったな」


雪華が言う。


「昔からは想像できない」


それは事実だった。

以前の白鬼なら。

誰かを好きになることも。

誰かに執着することもなかった。

だが今は違う。


雪華は踵を返した。


「帰る」


「何しに来た」


暁が聞く。

雪華は少しだけ振り返る。


そして。


「確認」


とだけ言った。

そのまま消える。

静かな夜が戻る。


恒一は首を傾げた。


「何だったんだ」


「分からない」


暁も答える。

だが少しだけスッキリしていた。

初めて口にしたからだ。


好きだからその言葉を誰かに、ちゃんと。

そしてその夜。


ベッドに戻る。

いつものように抱きつく。

恒一はもう何も言わない。

暁も遠慮しない。


目を閉じる。

好き。

その気持ちはもう疑いようがなかった。

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