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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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77/87

77話

昼休み、屋上。


恒一は飲み物を買いに行っていた。

今ここにいるのは彩音、鬼塚、玲司、氷室。

そして暁。

いつものメンバーだった。


「なあ」


鬼塚が言う。


「何だ」


彩音が答える。

そして二人は同時に暁を見た。


「いつ告白するんだ?」


暁が固まった。

数秒間、完全停止。


「……何の話だ」


「その反応でもう答え出てるんだよ」


彩音が呆れた。

玲司は笑いを堪えている。

氷室も珍しく頷いていた。


「客観的な話をしよう」


玲司が言う。


「まず神谷のこと好きだよね」


「……好きだ」


認めた。

あっさりだった。

周囲が少し驚く。

ここまで素直に認めるとは思わなかった。


「じゃあ次」


彩音が指を立てる。


「抱きついて寝てる」


「うん」


「学校でも隣」


「うん」


「休みの日も一緒」


「うん」


「取られたくない」


「……うん」


鬼塚がため息を吐いた。


「もう付き合ってないだけじゃねえか」


その場の全員が頷いた。

暁だけ首を傾げる。


「そうなのか?」


「そうだよ」


彩音が即答する。


「むしろ何でまだ告白してないの」


「……」


暁は少し黙る。

理由はある。

怖いのだ。


もし断られたら今の関係が壊れたらそれが嫌だった。

玲司はその顔を見て察した。


「振られるのが怖い?」


「……少し」


初めて弱気な声だった。

白鬼とは思えない。

だが恋愛では普通の女の子だった。


彩音は少し優しく笑う。


「まあそれは分かる」


「でもさ」


「ん?」


「神谷君が暁さん嫌いだったら」


彩音が言う。


「そもそも同じベッドで寝てないと思う」


暁が固まった。

鬼塚も頷く。


「それはそう」


玲司も頷く。


「普通なら追い出されてる」


氷室まで頷いた。

全員一致だった。

暁は少し考える。


確かに恒一は嫌なら嫌と言う。

それくらいは知っている。

なら少なくとも嫌われてはいない。


「……そうか」


少しだけ安心した。

その時、屋上の扉が開く。

恒一が戻ってくる。


「何の話してたんだ」


全員が暁を見る。

暁も全員を見る。


そして。


「何でもない」


全員一致だった。

恒一は嫌な予感しかしなかった。



放課後、帰り道。


いつもの二人。

住宅街、夕焼け。


「何かあったか」


恒一が聞く。


「別に」


暁が答える。

だが今日は少し違った。

恒一を見る回数が多い。


顔を見る。

目を逸らす。

また見る。


それの繰り返し。


「?」


恒一が首を傾げる。


「どうした」


「いや」


言えない。

今日の会話を思い出している。

嫌われてはいない。

それだけで少し嬉しい。



夜。

家。


夕飯と風呂を済ませそして寝る時間。

いつものベッド。

最近はもう説明不要だった。


自然に隣へ。

自然に抱きつく。

自然に落ち着く。


全部当たり前。


「恒一」


「ん?」


「もし」


少し迷う。

本当に少し。

そして。


「好きな人がいたらどうする」


聞いてしまった。

恒一は考える。


「どうもしないな」


「?」


「好きなだけだろ」


普通の答えだった。

だが暁の心臓はうるさかった。


好きなだけ今の自分と同じだ。


「そうか」


小さく呟く。

そしてさらに少しだけ近付いた。


「近い」


「そうか」


もう否定しない。

恒一も諦めている。


静かな時間。

暁は目を閉じる。

周囲はもう気付いている。

自分も気付いている。


あとは本人だけだった。

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