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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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75/82

75話

翌朝。


暁は少し寝不足だった。

原因は分かっている。


昨夜、頭を撫でられたこと。

思い出すたびに眠れなくなった。


「眠そうだな」


登校中。

恒一が言う。


「少し」


「ちゃんと寝ろ」


「努力する」


珍しく素直だった。

だが今日も距離は近い。


ほぼ肩が触れている。

恒一ももう慣れてしまっていた。



学校。


「暁さん」


彩音が近付いてくる。


「何だ」


「最近さ」


嫌な予感しかしない。


「神谷君に甘えすぎじゃない?」


暁が固まる。

鬼塚も頷く。

玲司は既に笑っている。


「客観的に見るとすごいよ」


「そうか」


「そうだよ」


彩音は指を折る。


「抱きついて寝る」


一つ。


「登下校ずっと一緒」


二つ。


「学校でも隣」


三つ。


「腕掴む」


四つ。


「服掴む」


五つ。


「頭撫でられて固まる」


六つ。


「最後いらない」


初めて少し焦った。

彩音はニヤニヤしている。

完全に面白がっていた。


その時、扉が開く。


「神谷君」


聞き慣れた声。

篠宮真希だった。


「協会から資料持ってきたよ」


そう言って恒一の隣へ行く。

自然な動き。

ただの仕事。


本当にそれだけ。

だが暁は見ていた。


そして気付けば動いていた。


すっ。


恒一と篠宮の間へ。

自然に本当に自然に割り込んだ。


「……」


「……」


「……」


全員が固まる。

暁だけ分かっていない。


「どうした?」


本人は真顔だった。

彩音が吹き出す。

鬼塚も耐えられていない。

玲司に至っては机に突っ伏している。


篠宮は数秒固まった後。

笑った。


「なるほど」


何かを理解したらしい。

暁は理解していない。



放課後。

帰り道。


恒一と暁。

しばらく歩いて恒一が言った。


「今日変だったぞ」


「何が」


「篠宮先輩との間に入っただろ」


暁が止まる。

思い出す。


確かに入った。

なぜかなぜだろう。

考える。


答えは簡単だった。

近かったから恒一に。


近付きすぎていたから。

だから間に入った。


「……」


自分で理解して少し顔が熱くなる。

これかなり独占欲では。


「暁?」


「何でもない」


慌てて歩き出す。

恒一は首を傾げた。



夜、家。

夕飯風呂。

そして寝る時間。


いつものベッド。

最近では抱きつくのも当たり前になっている。

恒一も何も言わない。

暁も遠慮しない。


そしてぎゅっ。

いつものように抱きつく。


「なあ」


恒一が言う。


「何だ」


「本当に落ち着くのか」


暁は少し考える。

そして頷いた。


「落ち着く」


嘘じゃない。

むしろ一番落ち着く。


恒一の隣が恒一の温もりが。

だから少しだけさらに近付く。


「近い」


「そうか」


「そうだ」


だが離れない。

恒一も諦めた。


静かな時間。

暁は目を閉じる。


最近、気付くことがある。

好きという感情は放っておいても大きくなるらしい。

前は隣にいられればよかった。


今は違う。


触れていたい。

近くにいたい。

できれば誰にも取られたくない。

そんなことばかり考えてしまう。


「重症だな……」


小さく呟く。

誰にも聞こえない声で。

そして好きな人の腕の中で安心しながら眠りについた

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