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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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68/70

68話

翌日、朝。

恒一と暁はいつものように登校していた。


「眠そうだな」


恒一が言う。


「少し」


実際眠かった。

昨夜は色々考えてしまったからだ。


恋、嫉妬、篠宮真希。

考えれば考えるほど落ち着かなかった。


「ちゃんと寝たか?」


「寝た」


半分嘘だった。

恒一はそれ以上聞かなかった。



学校、昼休み。

屋上。


いつものメンバー。

そしてなぜか今日は篠宮真希もいた。


「お邪魔してるよ」


そう言って笑う。

協会関連の情報交換らしい。

理由としては普通だった。


普通だったのだが暁は少し面白くなかった。


「神谷君」


「ん?」


「昨日言ってた件なんだけど」


篠宮が恒一へ話しかける。

恒一も普通に返す。

自然な会話。


ただそれだけ、それだけなのに暁は気になってしまう。


気付けば二人の会話を見ていた。


「ふーん」


玲司の声がした。

隣だった。

嫌な予感しかしない。


「何だ」


暁が言う。

玲司は笑った。


「嫉妬してる?」


暁が固まった。

即死級だった。


「してない」


反射的に否定する。

だが玲司は知っている。

こういう時の反応を。


「へぇ」


「してない」


「本当に?」


「本当」


玲司は少し笑った。

そして指を差す。

篠宮と話している恒一へ。


「じゃああれ見て何も思わない?」


「……」


思う。

かなり思う。

面白くない。

少し離れてほしい。

できれば帰ってほしい。

そこまで考えて暁は黙った。


玲司が吹き出す。


「重症だね」


「……」


否定できない。



昼休み終了後。

教室へ戻る。


暁はずっと考えていた。

嫉妬、やはり嫉妬だった。

好きだから。

他の女の子が近付くと嫌になる。

理屈は分かる。


問題はどうすればいいのか分からないことだった。



放課後、帰り道。

住宅街。


恒一と暁。

いつもの二人。

その途中、前から篠宮が歩いてきた。

偶然らしい。


「お、神谷君」


「先輩」


篠宮が手を振る。

普通に話し始める。


そして自然に恒一の隣へ立った。

その瞬間、暁が恒一の反対側へ移動する。


ぴったり、かなり近い。


「?」


恒一が見る。


「どうした」


「別に」


暁は真顔だった。

篠宮は少しだけ笑う。

気付いているらしい。


完全に。


「仲良いね」


篠宮が言う。


「普通だ」


暁が答える。

全然普通じゃない。

三人で少し歩く。


だが気付けば暁は恒一のすぐ隣。

離れない。

むしろ近付いている。


篠宮は面白そうだった。



数分後。

別れ際。


篠宮は小さく笑った。

そして暁へだけ聞こえる声で言った。


「頑張ってね」


「?」


意味が分からない。

暁は首を傾げる。

だが篠宮はそれ以上何も言わずに、去っていった。



夜、家。

夕飯、風呂。

そして寝る時間。


いつものベッド。

静かな部屋。


「恒一」


「ん?」


「もし」


暁が言う。

少しだけ迷う。


そして。


「恋人ができたらどうする」


恒一は考える。


「どうするって?」


「付き合うとか」


「好きな人ができたらな」


普通の答えだった。

当然だ。


だが暁の胸は少しだけ痛くなる。


「そうか」


小さく呟く。

恒一は気付かない。

その言葉の意味に。

そして目を閉じる。


玲司の言葉。

篠宮の言葉。

全部頭に残っていた。


気付けば嫉妬するだけではなくなっている。

少しずつ、少しずつ。

暁の中で。


「取られたくない」


という感情が大きくなっていた。

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