67話
翌日。
恒一は無事に学校へ復帰した。
傷もほとんど問題ない。
暁もようやく安心したらしい。
……表面上は。
昼休み。
屋上。
いつものメンバー。
「結局大した怪我じゃなかったじゃん」
鬼塚が言う。
「だから言っただろ」
恒一が答える。
すると隣の暁が言った。
「怪我は怪我だ」
まだ言っている。
恒一は苦笑した。
彩音はニヤニヤしていた。
「過保護だなー」
「普通だ」
「普通じゃないよ」
即座に否定された。
その時だった。
屋上の扉が開く。
見知らぬ女子生徒が現れる。
長い黒髪、整った顔立ち。
制服も違う。
上級生らしい。
「神谷君?」
恒一が振り向く。
「俺?」
「うん」
女子生徒は近付いてきた。
「少し話いいかな」
屋上が静かになる。
鬼塚、彩音、氷室、玲司。
全員が面白そうな顔をしている。
嫌な予感しかしない。
「何の用ですか」
恒一が聞く。
「実は協会の件で」
その言葉に暁の目が細くなる。
協会、つまり退魔師関係だ。
女子生徒は微笑んだ。
「私は二年の篠宮真希」
「協会所属」
「話は聞いてるよ」
そう言って手を差し出した。
恒一も握手する。
その瞬間、暁の表情が固まった。
なぜか少しだけ面白くなかった。
放課後。
帰り道。
恒一と暁のいつもの二人。
だが少し空気が違う。
「どうした」
恒一が聞く。
「何が」
「機嫌悪くないか」
「悪くない」
嘘だった。
少し悪い。
自分でも理由が分からない。
いや分かり始めている。
昼休みに篠宮と話していた時。
握手していた時。
楽しそうに話していた時。
胸が少しモヤモヤした。
面白くなかった。
「本当に?」
「本当」
短い返事。
恒一は首を傾げる。
家へ帰る。
夕飯、風呂。
そして夜。
いつもの部屋。
いつものベッド。
灯りは消えている。
静かな時間、暁は目を閉じていた。
だが昼のことを思い出す。
篠宮真希。
綺麗だった。
優しそうだった。
協会所属。
恒一とも話が合いそうだった。
「……」
面白くない。
なぜだろう。
考える。
そして答えは簡単だった。
好きな人が他の女の子と仲良くしている。
それが嫌だった。
「……あ」
そこでようやく気付く。
これが嫉妬。
恋愛小説で読んだことはある。
だが自分がなるとは思わなかった。
「どうした」
恒一が聞く。
暁は慌てる。
「何でもない」
即答。
だが胸のモヤモヤは消えない。
隣を見る。
恒一はもう眠そうだった。
そしてふと思う。
もし恒一に恋人ができたら。
もし自分以外の誰かと毎日一緒にいたら。
もしその相手が篠宮だったら。
嫌だ。
すごく嫌だ。
想像しただけで苦しくなる。
「……」
暁は小さく布団を握った。
恋を知った。
好きも知った。
そして今日。
嫉妬も知った。
初めて知る感情ばかりだった。
だが一つだけ確かなことがある。
自分は思っていた以上に、恒一のことが好きらしい。
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