62話
翌朝。
恒一が目を覚ます。
そして違和感を覚えた。
近い、いつもより近い。
「……」
目を開ける。
暁がいた。
しかも肩に頭を乗せたまま寝ている。
「おい」
軽く呼ぶ。
「……ん」
起きない。
完全に熟睡していた。
恒一はため息を吐く。
最近本当に距離が近い。
まあ今さらと言えば今さらだが。
数分後、暁も目を覚ました。
「おはよう」
「おはよう」
普通だった。
まるで今の状況に何の問題もないかのように。
「近くないか」
恒一が言う。
「そうか」
「そうだろ」
暁は少し考える。
だが彩音の言葉を思い出した。
今まで通りでいい。
好きな人にしかしないことはもうしている。
つまり問題ない。
「問題ない」
結論だった。
「そうかよ」
恒一も諦めた。
学校。
朝、教室。
恒一が席へ向かう。
するとすぐ後ろから、暁もついてくる。
「どうした」
「別に」
席に座る。
すると暁も近くの席へ。
いつも通りなのだが、今日は少し違った。
放課時間。
恒一が廊下へ出る。
暁も出る。
自販機へ行くと暁も行く。
図書室へ行くも暁も来る。
「お前暇なのか」
「暇じゃない」
「じゃあ何でいる」
少し考える。
そして。
「一緒にいる」
それだけだった。
恒一は首を傾げた。
昼休み。
屋上。
彩音が一発で気付いた。
「近くなってる!」
声が大きい。
「そうか?」
恒一が言う。
「そうだよ!」
彩音が指差す。
確かに暁はいつも以上に恒一の、隣だった。
ほぼ肩が触れる距離。
鬼塚も頷いている。
「確かに近いな」
「そうか」
暁は自覚が薄い。
というより別に悪いことだと思っていない。
好きだから一緒にいる。
ただそれだけ。
放課後、帰り道。
当然のように二人。
住宅街を歩く。
その途中、前から自転車が来た。
少し道が狭い。
恒一が避ける。
その瞬間暁が自然に腕を掴んだ。
「危ない」
「そこまでじゃないだろ」
「そうか?」
掴んだまま離さない。
完全に無意識だった。
恒一も慣れてしまっている。
家へ到着。
夕飯、風呂そして夜。
リビングでテレビを見ていた。
すると暁が隣へ座る。
近い、かなり近い。
「お前今日どうした」
恒一が聞く。
「何が」
「ずっと近い」
暁は考える。
だが答えは出ている。
好きだから。
しかしそれはまだ言えない。
だから。
「落ち着く」
とだけ答えた。
恒一は苦笑する。
「最近そればっかだな」
「本当だから」
嘘ではない。
むしろ全部本当だった。
夜。
いつものベッド。
灯りは消えている。
静かな時間。
暁は目を閉じる。
そして少しだけ恒一へ寄る。
以前なら無意識だった。
今は少し違う。
自分で分かっている。
隣にいたい。
近くにいたい。
そう思う。
「恒一」
「ん?」
「何でもない」
呼んでみただけだった。
名前を呼ぶだけで少し嬉しい。
そんな自分にまだ慣れていなかった。
一方恒一は思う。
最近の暁、何か変だな。
だがまさか恋愛感情だとは一ミリも思っていなかった。
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