47話
休日明け
朝、目が覚める。
そして目の前に暁がいる。
もう驚かない。
最近は毎朝こうだった。
寝相なのか、無意識なのか。
気付けば距離が近くなっている。
「おはよう」
「おはよう」
暁も目を開く。
寝起きの声だった。
「起きるか」
「うん」
二人はベッドから出る。
朝食、登校。
いつもの日常。
平和だった。
少なくとも表面上は。
学校。
昼休み、屋上。
恒一たちはいつものように集まっていた。
そして珍しく玲司の表情が真面目だった。
「どうした」
恒一が聞く。
「少し面倒なことになってる」
玲司が答える。
その瞬間、暁の目が細くなった。
「夜行衆か」
「正解」
玲司は頷く。
冗談を言う時の顔ではない。
「黒峰が動き始めた」
静かな空気が流れる。
鬼塚と彩音も真面目な顔になった。
協会側の情報網にも引っかかっているらしい。
「何をする気だ」
恒一が聞く。
玲司は少し考える。
そして。
「神谷恒一」
「ん?」
「君を狙うと思う」
即答だった。
恒一はため息を吐く。
予想通り過ぎる。
「理由は」
「簡単」
玲司が言う。
「白鬼を取り戻すため」
暁が無言になる。
玲司は続けた。
「今の暁は神谷恒一を優先する」
「夜行衆から見れば邪魔なんだよ」
「だから消したい」
非常に分かりやすかった。
そして非常に面倒だった。
放課後、帰り道。
恒一と暁いつもの二人。
だが少しだけ空気が違う。
「気にするな」
恒一が言う。
「気にする」
暁は即答した。
珍しく少し不機嫌そうだった。
「何も起きてないだろ」
「起きるかもしれない」
それが問題だった。
暁は知っている。
夜行衆は諦めない。
黒峰も諦めない。
だから本当に狙ってくる可能性が高い。
「大丈夫だろ」
恒一が笑う。
すると暁が立ち止まった。
「大丈夫じゃない」
静かな声だった。
だが強い感情が乗っていた。
恒一が振り返る。
暁は少し俯いている。
「私は」
そこで言葉が止まる。
何を言いたいのか。
自分でも整理できていない。
ただ一つだけ確かなことがあった。
恒一が傷付くのは嫌だった。
誰よりも何よりも、それだけははっきりしている。
「暁」
恒一が呼ぶ。
すると暁は小さく息を吐いた。
「何でもない」
そう言って歩き出す。
だがその日からだった。
暁の警戒が明らかに強くなったのは。
家へ帰る。
夕飯、風呂、夜。
いつものように同じベッド。
部屋の灯りは消えている。
静かな時間。
「恒一」
「ん?」
「明日からしばらく」
少し考える。
そして。
「一人で行動するな」
恒一は苦笑した。
「過保護だな」
「そうかもしれない」
珍しく否定しない。
本気だった。
恒一は天井を見る。
そして。
「分かったよ」
と答えた。
それを聞いて暁は少しだけ安心する。
目を閉じる。
隣から聞こえる呼吸音。
それを確認するように少しだけ近付く。
最近の癖だった。
そして気付かない。
自分がどれだけ恒一を大切に思っているのか。
もう答えは出かけているのにまだ本人だけが気付いていなかった。
その頃、街外れの廃ビル。
黒峰は夜景を見下ろしていた。
その後ろには数人の妖怪。
「準備は」
「終わりました」
部下が答える。
黒峰は笑う。
「なら始めよう」
静かな声。
だがその瞳は冷たかった。
「まずは契約者からだ」
夜行衆はついに本格的に動き始めていた。
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