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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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45/64

45話

月曜日。


昨夜の戦闘から一夜明けた。

恒一は教室で机に突っ伏していた。


「眠い」


「毎回言ってるな」


鬼塚が呆れる。


「昨日色々あったんだよ」


「妖怪か?」


「まあな」


詳しくは話せない。

だが夜行衆が本格的に動き始めたのは確かだった。


ホームルーム。

授業

昼休み。


そして屋上。

いつものメンバーが集まる。

当然のように暁もいる。

当然のように恒一の隣にいる。


そして当然のように玲司もいた。


「お前いつまで学校にいるんだ」


恒一が聞く。


「飽きるまで」


「帰れ」


「断る」


会話が成立しない。

玲司は笑いながらフェンスへ寄り掛かった。


「ところで」


その表情が少しだけ真面目になる。

珍しかった。


「夜行衆について知りたい?」


恒一と暁が顔を上げる。


「知ってるなら話せ」


恒一が言う。

玲司は頷いた。


「夜行衆は妖怪の組織だ」


「それは知ってる」


「問題は目的」


そこで玲司は少し笑う。

嫌な笑みだった。


「白鬼の復活だよ」


静寂、風が吹く。

暁の表情は変わらない。

だが恒一は眉をひそめた。


「復活?」


「そう」


玲司が頷く。


「今の暁じゃない」


「昔の白鬼」


「妖怪たちが恐れた最強の災厄」


暁は黙って聞いている。

玲司は続けた。


「夜行衆には白鬼を信仰してる連中もいる」


「王として崇拝してるやつもいる」


「逆に利用したい連中もいる」


面倒な話だった。

非常に。


「だから狙われる」


恒一が言う。


「そういうこと」


玲司が頷く。

そして少しだけ真面目な目になる。


「神谷恒一」


「何だ」


「君も狙われる」


予想はしていた。

昨日の件で確信した。

暁ではなく自分が狙われる可能性が高い。


「白鬼を取り戻すには」


玲司が言う。


「君が邪魔だから」


暁が立ち上がる。

空気が少し冷える。

玲司は肩をすくめた。


「怒らないで」


「事実だから」



放課後。

帰り道。


いつもの二人。

夕焼けが街を染めている。


「面倒になったな」


恒一が言う。


「そうだな」


暁も頷く。

少し歩く。

そして暁が小さく呟いた。


「恒一」


「ん?」


「私は戻らない」


突然だった。

恒一が見る。

暁は前を向いたまま歩いている。


「白鬼には戻らない」


静かな声だった。

だが強い意志があった。


「そうか」


恒一は答える。


「ならそれでいい」


暁が少しだけ目を瞬く。


「いいのか」


「お前が決めることだろ」


当然だった。

白鬼になるか、ならないか。

それは暁自身の問題だ。


恒一が決めることじゃない。


「俺は今のお前の方がいいしな」


何気なく言った。

本当に何気なく。

だが暁は止まった。


「どうした」


「……」


数秒、十秒。

そして。


「そうか」


とだけ答える。

だが耳が少し赤い。

本人は気付いていない。



家へ帰る。

夕飯、風呂。

いつもの夜。


恒一は自室で宿題をしていた。

するとノックもなしにドアが開く。


「おい」


「忘れた」


暁だった。

最近雑になっている。


「どうした」


「別に」


そう言いながら部屋へ入る。

そしていつもの場所へ座る。

静かな時間。

しばらくして暁がぽつりと呟いた。


「恒一」


「ん?」


「もし」


少し考える。

言葉を選ぶように。


「私が白鬼に戻ったらどうする」


恒一はペンを止める。

そして少し考えた。


「殴る」


「……」


「戻って来いって言う」


暁が固まる。

恒一は普通に言った。

冗談でも何でもない。


本気だった。


「お前は暁だろ」


それだけだった。

白鬼とか、最強とか災厄とかそんなものは関係ない。

恒一にとっては一緒に住んでいる少女の方が大事だった。



静かな部屋。

暁は俯く。

少しだけ胸が温かい。

理由は分からない。


でも嫌じゃなかった。

むしろ嬉しかった。


「……うん」


小さく返事をする。

そして気付けばいつもより少しだけ恒一の近くへ座っていた。

もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

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