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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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42/59

42話

翌日、朝。


恒一が目を覚ます。

時計を見る。

六時四十分。


いつも通りだった。

ベッドから起き上がり、リビングへ向かう。


すると既に朝食の準備が終わっていた。


「おはよう」


「おはよう」


暁が自然に返事をする。

もう当たり前になっている光景だった。


朝食を食べる。

食器を片付ける。

制服に着替える。


そして家を出る。


「今日暑いな」


「そうだな」


二人並んで歩く。

距離は近い。

本人たちは気付いていないだが周りから見るとかなり近い。

肩が触れそうなくらいだった。



学校、教室。

恒一が席へ座ると彩音がやって来た。

そして開口一番。


「最近さらに距離近くなってない?」


恒一は首を傾げる。


「何が?」


「何がじゃないよ」


彩音が呆れる。

そこへ暁もやって来る。

当然のように恒一の隣へ座った。

まだホームルーム前なので席は自由だ。


だが本当に当然のようだった。


「ほら」


彩音が指差す。


「これ」


「?」


恒一も暁も意味が分からない。


「何が問題なんだ」


暁が聞く。


「近いんだよ」


「そうか?」


「そうだよ!」


彩音が机を叩く。

鬼塚まで頷いていた。


「確かに近いな」


「普通だろ」


恒一が言う。


「普通じゃない」


即答だった。

だが本人たちは全く理解していない。



昼休み、屋上。

いつもの場所。


恒一が弁当を開く。

すると当然のように暁が隣へ座る。

ぴったりとは言わない。

だが近い、かなり近い。


彩音が無言になる。

鬼塚も無言になる。

氷室まで無言だった。


「何だよ」


恒一が聞く。


「いや」


彩音が遠い目をする。


「もう何も言わない」


「?」


意味が分からない。



午後、授業。

玲司は今日も学校へ来ていた。

後ろから教室を眺めている。


そして窓際の席。

恒一と暁を見る。


少しだけ笑った。



放課後。

玲司が二人へ近付く。


「仲良いね」


「普通だ」


恒一が答える。


「そうかな」


玲司は暁を見る。


「神谷恒一」


「何だ」


「もし白鬼がいなくなったらどうする?」


急な質問だった。

恒一は少し考える。


そして。


「困るな」


と答えた。

それは本音だった。


朝も学校も帰り道も家も全部変わる。

今さら想像できない。


「そう」


玲司は少し笑う。

今度は暁を見る。


「じゃあ逆」


「神谷恒一がいなくなったら?」


暁は即答した。


「嫌だ」


迷いは一切なかった。

玲司が笑う。

彩音が頭を抱える。

鬼塚は天井を見た。

氷室はため息を吐いた。


「何だその反応」


暁が聞く。

誰も答えない。

答えても無意味だからだ。



帰り道。

恒一と暁。

いつもの二人。


夕日が差している。


「今日は変なことばかり聞かれたな」


恒一が言う。


「そうだな」


暁も頷く。

少し歩く。

すると車道側を大型トラックが通った。


その瞬間恒一が何となく暁を歩道の内側へ引っ張る。

本当に無意識だった。


危ないから。

それだけ。


「ん」


暁が少し目を瞬く。

恒一は気付いていない。

普通に歩き続ける。


だが暁だけは違った。

少しだけ胸の奥が温かくなる。


守られた、そう感じた。


白鬼だった頃。

誰かに守られた記憶なんてない。

いつも守る側だった。

だからこの感覚が少し新鮮だった。



家へ帰る。

夕飯、テレビ、いつもの時間そして夜。

恒一がソファで寝転がっていると。

隣へ暁が座る。


今日はさらに近い。

肩が軽く触れていた。


「近くないか」


恒一が聞く。


「そうか?」


暁は本気で分かっていない。

だが少しだけ考える。


そして。


「落ち着く」


と答えた。


「そうか」


恒一も深く考えない。

暁は小さく息を吐く。

確かに近い。


だがこの距離が一番落ち着く理由はまだ分からない。

ただ離れたいとは全く思わなかった。

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