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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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41話

月曜日。


ホームルーム前。

神谷恒一はいつも通り眠そうな顔で席に座っていた。


「眠い」


「毎朝言ってるな」


鬼塚が呆れる。


「事実だからな」


そんなやり取りをしていると。

教室の外が妙に騒がしいことに気付いた。

廊下から女子の声が聞こえる。


ざわざわしている。


「何だ?」


鬼塚が窓の外を見る。


「転校生か?」


「この時期に?」


恒一も少し気になった。

だがその直後、教室のドアが開いた。

担任が入ってくる。


そしてその後ろにいた人物を見た瞬間。

恒一は嫌な顔になった。


「よし、今日は見学者が来てる」


担任が言う。


「協会関係の調査員だ」


教室がざわつく。

そしてその調査員は笑顔で一礼した。


「初めまして」


見覚えしかない顔だった。

安倍玲司。

あの陰陽師だった。


「……」


恒一が無言になる。


「……」


暁も無言になる。

玲司だけが楽しそうだった。


「よろしく」


女子たちがざわつく。

顔だけなら普通に格好いい。

しかも若い。

人気が出るのも分かる。


「何でいるんだよ」


恒一が小さく呟く。

すると玲司がこちらを見た。

聞こえていたらしい。


そして笑った。

嫌な予感しかしない。



授業開始。


玲司は教室後方で見学している。

ただそれだけ、それだけのはずなのに妙に目立つ。

しかも何度か暁の方を見ている。

その度に暁の機嫌が悪くなる。


「怖いなぁ」


玲司が小さく笑う。


「見てるだけだよ」


「見るな」


暁が即答した。

授業中である。

教師が固まった。

クラス全員も固まった。

玲司だけが笑っていた。



昼休み、屋上。

いつものメンバーが集まる。

そして当然のように玲司もいた。


「何でいるんだ」


恒一が聞く。


「昼休みだから」


「そういう意味じゃない」


玲司は笑う。

彩音は少し困惑していた。

鬼塚も同じだった。


「神谷」


「何だ」


「知り合い?」


「知らないと言いたい」


本音だった。

だが玲司は楽しそうに暁を見る。


「本当に変わったな」


暁は無言。


「昔のお前なら学校なんて来ない」


「興味ない」


「そうだろうね」


玲司が頷く。

そして恒一を見る。


「でも今は来る」


「当たり前だろ」


恒一が言う。

高校生なのだから。


だが玲司は首を横に振った。


「違う」


「?」


「神谷恒一がいるから来るんだろ?」


静寂。


彩音が吹き出した。

鬼塚も吹き出した。

氷室は顔を逸らした。

暁だけが真顔だった。


「そうだが」


即答。

今度は全員が固まった。


「え?」


鬼塚が聞き返す。


「そうだが」


もう一度答える。

暁は本気だった。

学校へ来る理由は勉強、友達。

そんなものではない。

恒一がいるから。


ただそれだけ。


「重い」


彩音が呟いた。


「重いな」


鬼塚も同意した。

暁は意味が分からない。



放課後、帰り道。

いつもの二人。

玲司はいない。

平和だった。


「今日は大変だったな」


恒一が言う。


「そうだな」


「玲司のやつ何なんだ」


「分からない」


暁も首を傾げる。

本当に分からない。

ただ一つだけ確かなことがあった。


玲司は何かを見ている。

白鬼でもない。

力でもない。


もっと別の何かを。


「恒一」


「ん?」


暁が少し考える。

そして。


「私は変わったのか?」


と聞いた。

恒一は歩きながら答える。


「変わったな」


即答だった。


「そうか」


「前はもっと無口だった」


「そうなのか」


「今は普通だ」


少しだけ笑う。


「むしろ人間っぽい」


暁は黙る。

数秒。


そして小さく呟いた。


「悪くないな」


その言葉に恒一も少し笑った。

昔の白鬼なら絶対に言わなかった言葉だった。

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