表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/57

40話

土曜日。


昨日の散歩のせいで恒一は少し寝不足だった。

原因は明らかである。

好きとは何か、恋愛とは何か。

そんな話をされたせいだ。

しかも当の本人は何事もなかったように朝食を作っていた。


「眠そうだな」


「誰のせいだと思ってる」


「?」


本気で分かっていない顔だった。

恒一は諦めた。

朝食を食べ終える。


食器を片付ける。

そして久しぶりに何も予定のない休日が始まった。



昼過ぎ。

スーパーへ買い物に出ることになった。

食材が切れかけていたからだ。

当然のように暁も付いてくる。


「荷物持ちか」


「違う」


「じゃあ何だ」


「一緒に行くだけだ」


最近はいつもこんな感じだった。

二人で歩き、二人で買い物をする。

気付けば完全に日常になっている。

スーパーで買い物を終えた帰り道。

ふと暁が足を止めた。


「どうした」


恒一も立ち止まる。

暁の視線の先、そこには一人の男が立っていた。

年齢は二十代前半ほど。

黒い髪、細身の体。

どこにでもいそうな青年。


だが普通ではない。

恒一でも分かる。

妙な気配があった。


「初めまして」


青年は穏やかに笑う。


「神谷恒一君」


そして視線を暁へ向けた。


「白鬼」


空気が変わる。

周囲の温度が下がった気がした。

暁の表情も変わる。

いつもの無表情ではない。


警戒している。


「誰だ」


暁が聞く。

青年は軽く頭を下げた。


「安倍玲司」


その名前に反応したのは暁だけではなかった。

恒一も聞いたことがある。

協会の人間が話していた。


天才、危険人物、問題児。

そんな単語と一緒に。


「陰陽師だ」


玲司は笑う。


「協会ではないけどね」


「何の用だ」


暁の声は冷たい。

玲司は気にした様子もない。


「興味があった」


「何に」


「君に」


玲司は真っ直ぐ暁を見る。


「最強だった白鬼」


「妖怪の王」


「伝説」


「災厄」


並べられる言葉。

だが暁の表情は変わらない。


「興味ない」


「だろうね」


玲司は笑った。


「でも僕は興味がある」


「だから会いに来た」


恒一は一歩前に出る。

何となくこいつは気に入らなかった。

理由は分からない。

だが本能的に。


「会うだけなら終わっただろ」


玲司が視線を向ける。

初めて恒一を見る。


数秒。

そして少しだけ笑った。


「君か」


「何がだ」


「白鬼が執着している契約者」


暁の眉が僅かに動く。


「執着していない」


即答だった。

玲司は吹き出した。


「そうかな」


「そうだ」


「毎日一緒にいて?」


「そうだ」


「離れようとしなくて?」


「そうだ」


「他の女と話すと不機嫌になるのに?」


静寂。

恒一が固まる。

暁も固まる。


玲司だけが笑っていた。


「面白いな」


「黙れ」


暁が言う。

珍しく感情が乗っていた。

玲司はさらに面白そうにする。


「やっぱり変わった」


「昔の君は誰にも興味を持たなかった」


「……」


「でも今は違う」


玲司は恒一を見る。

まるで観察するような目だった。


「君の何がそこまで特別なんだろうね」


その言葉に暁が一歩前へ出る。


「やめろ」


声が低い。

玲司は肩をすくめた。


「怖いな」


「ただの疑問だよ」


そして最後に玲司は笑った。


「また来る」


「来るな」


「それは無理だ」


即答だった。

どこか葛葉に似ている。


だが決定的に違う。

葛葉は信用できる。

こいつは信用できない。


そんな感覚があった。


玲司は踵を返す。

そして去り際に振り返った。


「白鬼」


暁が見る。


「君は今幸せか?」


不意な質問だった。

暁は少し考える。


数秒。


そして。


「幸せだと思う」


そう答えた。

玲司は目を見開いた。

本当に意外そうだった。


次の瞬間、楽しそうに笑う。


「なるほど」


「面白い」


それだけ言って去っていった。

静かになる。


恒一はため息を吐いた。


「変なやつだったな」


「そうだな」


暁も頷く。

しばらく歩く。


すると暁が小さく呟いた。


「幸せか」


「ん?」


「さっきの質問だ」


恒一は少し考える。


「まあ俺は幸せだな」


そう答えた。


学校、友達、日常。

そして暁。

色々あるが悪くない。

むしろかなり良い方だ。


「そうか」


暁は少しだけ目を細めた。


そして誰にも聞こえないくらい小さな声で。


「私もだ」


と呟いた。

もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ