表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/54

37話

文化祭二日目。


朝から恒一は機嫌が悪かった。

理由はもちろん王子様コンテストである。


「逃げるか」


教室で呟く。


「無理だな」


鬼塚が即答した。


「諦めろ」


「嫌だ」


「もうエントリー済みだぞ」


最悪だった。

完全に包囲されている。

そんな恒一を見ながら彩音は楽しそうに笑っている。


「人気者は大変だねー」


「うるさい」


「暁さんも応援してるよ?」


突然話を振られた暁は少し考えた。


「別に」


いつもの返事だった。

だが彩音は知っている。

昨日からずっと機嫌が悪いことを。


理由も分かっている。

本人だけが分かっていない。



午前中の喫茶店営業が終わる。


そして問題の時間がやってきた。

体育館。


文化祭の人気イベント。

王子様コンテスト。

女子生徒たちの歓声が響いている。


「帰りたい」


恒一が呟く。


「頑張れー」


彩音が手を振る。

全く応援する気が感じられない。

ステージ裏、出場者たちが待機していた。


皆やる気満々である。

恒一だけ帰りたそうだった。


「神谷」


声を掛けられる。

振り返る、同じ学年の男子だった。


サッカー部で有名なやつだ。


「優勝狙ってるのか?」


「狙ってない」


「そうか」


本当に興味がないらしい。

相手も困惑していた。

そんなやり取りをしている間にイベントが始まる。


一人ずつステージへ出ていく。


歓声、拍手、アピール。

恒一には理解できない世界だった。


そしてついに自分の番が来る。


「次は二年三組、神谷恒一くんです!」


歓声。

恒一は仕方なくステージへ上がった。

スポットライト、観客席、大量の視線。

面倒だった。

本当に面倒だった。


司会がマイクを向ける。


「神谷くん! 一言お願いします!」


恒一は少し考えた。

そして。


「帰りたいです」


会場が爆笑した。

女子たちも笑っている。


司会まで笑っていた。


「面白いですね!」


「そうか」


全く面白いと思っていない顔だった。

そのギャップが余計に受けたらしい。

さらに歓声が大きくなる。


観客席、彩音は腹を抱えて笑っていた。

鬼塚も笑っている。

氷室は呆れている。


そして暁はじっとステージを見ていた。


歓声。

女子たちの声。


何となく面白くなかった。


「暁さん」


彩音が横から話しかける。


「何だ」


「機嫌悪い?」


「悪くない」


嘘だった。

最近本当に分かりやすい。


ステージ上、コンテストは進んでいく。


最後は投票。

そして結果発表。


「優勝は――」


司会が叫ぶ。


「神谷恒一くんです!」


歓声、拍手。

恒一は固まった。


「何で?」


本気で分からなかった。

女子たちは盛り上がっている。

クラスメイトたちも喜んでいる。


鬼塚は爆笑している。

最悪だった。


表彰を終えて戻る。


教室。


クラス全員が騒いでいた。


「優勝おめでとう!」


「写真撮ろう!」


「王子様!」


「やめろ」


恒一は本気で嫌そうだった。

だが女子たちは聞いていない。


その様子を暁は少し離れた場所から見ていた。


「行かないの?」


彩音が聞く。


「何がだ」


「神谷くんのところ」


暁は視線を向ける。

女子に囲まれている恒一。

楽しそうなクラスメイトたち。

少しだけ胸がもやもやする。

理由は分からない。


だが面白くなかった。


「行かない」


そう答える。


だが五分後。

気付けば恒一の隣にいた。


「お前どうした」


恒一が聞く。


「別に」


まただった。

恒一の近くに来ると少し落ち着く。

理由は分からない。



文化祭終了後。

片付けも終わり空は夕焼け色になっていた。

帰り道、恒一と暁が並んで歩く。


「疲れたな」


恒一が言う。


「そうだな」


「二度と出たくない」


「人気だった」


暁が言う。


「だから何だ」


「……」


少し黙る。

そして。


「面白くなかった」


と呟いた。


恒一が首を傾げる。


「文化祭か?」


「違う」


「じゃあ何だ」


暁は答えない。

答えられない。

自分でも分からないからだ。


ただら恒一が女子たちに囲まれているのを見ているとなんとなく嫌だった。


家へ帰る。

夕飯、風呂、いつもの時間。


そして夜。

恒一が自室で本を読んでいると。


コンコン。


ノック。


「入れ」


ドアが開く。

暁だった。

もう日課になりつつある。


「どうした」


「特に用事はない」


「なら来るな」


もっともだった。

だが暁は部屋へ入り、いつもの場所へ座る。

しばらく無言。


静かな時間。

すると暁がぽつりと呟いた。


「恒一」


「ん?」


「王子様だったな」


恒一は吹き出した。


「やめろ」


「そう呼ばれていた」


「忘れろ」


「無理だ」


少しだけ本当に少しだけ暁が笑った。

それを見た恒一も笑う。


そんな何でもない時間が暁には一番心地良かった。

もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ