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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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36話

文化祭当日。


朝から学校は騒がしかった。

校門には来場者が集まり、生徒たちは慌ただしく準備を進めている。

恒一も朝早くから学校へ来ていた。


「眠い」


「いつも言ってるな」


隣を歩く暁が言う。


「今日は特にだ」


「そうか」


相変わらずの会話だった。

教室へ入る。


すると既に多くの生徒が集まっていた。


「神谷くん!」


「着替え手伝って!」


「看板運んで!」


早速捕まる。

文化祭というのは面倒なものだった。


「頑張れー」


彩音が笑っている。

絶対楽しんでいる。


「手伝え」


「私は接客準備で忙しいから!」


嘘だった。

絶対暇だった。

そんなやり取りをしているうちに開場時間が近付いてくる。


今回のクラスの出し物は和風喫茶。

男子は簡単な和装。

女子は袴風の衣装になっていた。


恒一も着替え終わる。


鏡を見る。


「似合ってるじゃん」


鬼塚が言う。


「そうか?」


「普通に格好いいぞ」


「興味ない」


本気だった。

すると近くにいた女子たちがざわつく。


「神谷くん似合うね」


「思ったより格好いい」


「写真撮りたい」


恒一は面倒そうな顔をした。

だが女子たちは楽しそうだった。

その様子を少し離れた場所から見ている人物がいる。


暁だった。


「暁さん?」


彩音が近付く。


「どうしたの?」


「何がだ」


「また見てる」


「見ていない」


嘘だった。

最近このやり取りばかりだった。


「神谷くん人気だね」


彩音が言う。


「そうだな」


返事は普通。

しかし少しだけ機嫌が悪い。

彩音は見逃さない。


「嫌?」


「嫌ではない」


数秒考える。

そして。


「少しだけ面白くない」


と答えた。

彩音は吹き出した。


「それ嫉妬だって」


「違う」


即答だった。

学習能力がない。



開場。

予想以上に客が来た。

忙しい、本当に忙しい。

恒一は注文を取ったり料理を運んだりと走り回っていた。


「神谷くーん」


女子客から呼ばれる。


「写真いい?」


「嫌だ」


「なんで!?」


「面倒だから」


正直だった。

だが結局クラスメイトに押し切られて写真を撮らされる。

その様子を見ていた暁は明らかに不機嫌だった。


「怖い顔してるよ」


彩音が言う。


「していない」


「してる」


即答だった。



午後、休憩時間。

恒一はようやく一息ついていた。


「疲れた」


椅子へ座る。

すると隣に暁が座った。

かなり自然だった。

最近はもう誰も驚かない。


「忙しかったな」


恒一が言う。


「そうだな」


「そっちはどうだった」


「普通」


そう答える。

だが少し間を置いて。


「人気だったな」


と言った。


「何が」


「お前」


恒一は首を傾げる。


「そうか?」


「そうだ」


それだけ言う。

何となく不満そうだった。

理由は本人も分からない。


「変なやつだな」


恒一が笑う。

その笑顔を見ると少しだけ気分が良くなる。

暁はそれに気付かない。



夕方。


文化祭一日目終了。

片付けをしている教室。

生徒たちは疲れていただが楽しそうでもある。

そんな中、彩音が突然立ち上がった。


「明日さ!」


全員が見る。


「王子様コンテストあるじゃん!」


嫌な予感しかしない。


「神谷くん出ようよ!」


教室が盛り上がる。


「いいじゃん!」


「出よう!」


「絶対ウケる!」


恒一は嫌な顔をした。


「断る」


しかしクラスメイトたちは聞いていない。


「多数決!」


「賛成!」


大量の手が上がる。

終了だった。


「おい」


「頑張れ王子様」


鬼塚が肩を叩く。

殴りたかった。

その時。暁が静かに聞いた。


「何だそれは」


彩音が満面の笑みで答える。


「神谷くんが女子に囲まれるイベントだよ」


静寂、数秒後。


「そうか」


暁は頷いた。

だがその顔は今日一番不機嫌だった。

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