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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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34/51

34話

文化祭まで残り二週間。

準備は順調に進んでいた。


教室では机を移動したり、看板の案を考えたりと慌ただしい。

恒一もそれなりに働いていた。


「神谷くん」


女子の声がする。

振り返るとクラスメイトの佐伯だった。


「ん?」


「このデザインどう思う?」


「いいんじゃないか」


「ほんと?」


「俺はそういうの詳しくないけど」


「それでも参考になるよ」


そんな他愛ない会話。

別に特別なことではない。

文化祭準備中ならよくあることだ。


だが教室の反対側。

暁はその様子を見ていた。


「暁さん?」


クラスメイトが声を掛ける。


「こっちの飾りなんだけど──」


「後で見る」


珍しい返答だった。

いつもなら普通に対応する。

しかし視線は恒一の方へ向いている。


「……」


少し面白くない。

理由は分からないだが面白くない。

その時、佐伯が笑った。

恒一も少し笑った。


それを見た瞬間。

さらに面白くなくなった。


「暁さん」


後ろから彩音が現れる。


「怖い顔してる」


「していない」


「してる」


即答だった。


「していない」


「してる」


しばらく続いた。

結局、彩音が勝った。


「何でそんな不機嫌なの?」


「不機嫌ではない」


「神谷くん見てたよね?」


「見ていない」


嘘だった。

彩音は確信した。

完全に嫉妬である。

本人だけが気付いていない。


昼休み、屋上。

いつものメンバー。


恒一は購買で買ったパンを食べている。

鬼塚はスマホを見ている。

氷室は珍しく寝ている。


彩音は楽しそうだった。


「神谷くん」


「何だ」


「モテるね」


「急に何だ」


「クラスの女子と仲良さそうだったじゃん」


「文化祭準備だろ」


「へぇ」


彩音が暁を見る。

暁は無言で弁当を食べていた。

だが少しだけ箸の動きが早い。


「暁さんはどう思う?」


「何がだ」


「神谷くんがモテること」


暁は考える。

数秒。


そして。


「別に」


と答えた。

彩音は吹き出しそうになった。

絶対に別にじゃない。

鬼塚も気付いている。

氷室も気付いている。


恒一だけ気付いていない。



放課後。

文化祭準備の続き。

恒一は看板の色塗りをしていた。


そこへ佐伯がやって来る。


「神谷くん」


「ん?」


「ちょっと手貸して」


「いいぞ」


立ち上がる。


その瞬間、反対側の席から椅子を引く音がした。


ガタン。


全員が見る。

暁だった。


「どうした?」


恒一が聞く。


「私も行く」


「何で?」


「手伝う」


恒一は首を傾げる。

別に二人で十分だと思う。

だが暁は当然のようについて来た。

佐伯も少し困惑していた。


結果、三人で作業することになった。

彩音は遠くから見ながら机に突っ伏した。


「もう駄目だこれ」


鬼塚が笑う。


「面白いからいいだろ」


「面白いけどさぁ」



放課後の帰り道。

恒一と暁。


いつもの二人。

夕日が差している。


「今日はやたら手伝ってたな」


恒一が言う。


「そうか」


「珍しいと思った」


「暇だった」


嘘だった。

だが本人も理由を説明できない。


「ふーん」


恒一は特に気にしない。

しばらく歩く。


すると向こうから女子二人組がやって来た。

同じ学校の生徒だ。


「あ、神谷くん」


「おう」


軽く挨拶。

それだけ本当にそれだけだった。

だが暁は少しだけ恒一との距離を縮めた。


肩が触れるくらい。

無意識だった。

女子たちは気付く。

恒一は気付かない。


「じゃあまたね」


「ああ」


女子たちが去る。

その後、暁はしばらく無言だった。



家へ帰る。

夕飯を食べる。

テレビを見る。


いつもの日常。



夜。

恒一がソファに座っていると隣へ暁が座る。

しかも今日は少し近い。


「どうした」


「何がだ」


「近くないか」


暁は少し考えた。

そして。


「そうか?」


と言った。

本人は本気だった。

だが恒一から見ても近い。


彩音が見たら大騒ぎしている。

そんな距離だった。

暁はテレビを見ながら思う。

今日も少し嫌だった。

恒一が他の女子と話しているのが理由はまだ分からない。


だが少なくともこうして隣にいると落ち着いた。

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