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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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33/51

33話

数日後。

ホームルーム。

教室は妙に騒がしかった。

理由は簡単、文化祭である。


「よし、それじゃ文化祭の出し物決めるぞー」


担任が言うと、教室中から声が上がる。


「メイド喫茶!」


「お化け屋敷!」


「劇!」


「カフェ!」


好き放題だった。

恒一は窓際の席でぼんやりしていた。

文化祭に特別な思い入れはない。

適当に終わればいい。

そう思っている。


隣では暁も同じだった。


「何かやりたいのあるか?」


「ない」


即答、予想通りだった。

結局、多数決の結果。


クラスの出し物は喫茶店になった。


「次は係決めなー」


担任が言う。

すると女子たちが動き始める。


装飾係、接客係、会計係。

色々あるらしい。


恒一は面倒なので空いているところに入ろうとした。

その時だった。


「神谷くん接客やらない?」


クラスの女子が話しかけてくる。


「別にいいけど」


適当に返事をする。

その瞬間、隣の席から声がした。


「私もやる」


暁だった。

女子が固まる。


恒一も固まる。


「お前接客やるのか?」


「やる」


「珍しいな」


「そうか」


本人は平然としていた。

だが本当は違う。

恒一が接客をやるなら自分もやる。

それだけだった。



数分後。

接客係の名簿。

神谷恒一、暁。

並んで書かれていた。


「絶対狙ったでしょ」


彩音が後ろから言う。


「何がだ」


「もういいや」


彩音は諦めた。

最近このやり取りばかりだった。



昼休み、屋上。

いつものメンバーが集まっている。


「文化祭かー」


彩音が弁当を食べながら言う。


「楽しみだな」


鬼塚も珍しく乗り気だった。


「神谷は?」


「普通」


「暁さんは?」


「普通」


予想通りだった。

しかし彩音は見逃さなかった。


「でも接客係なんだよね?」


「そうだ」


「神谷くんと一緒だね?」


「そうだ」


「ふーん」


ニヤニヤしている。

暁は意味が分からない。

恒一も意味が分からない。


鬼塚だけ笑っていた。


「彩音」


氷室が呆れた声を出す。


「お前楽しんでるだろ」


「うん」


否定しなかった。



放課後。

文化祭準備が始まる。

机を運ぶ、装飾を考える。

クラス全体が慌ただしい。

恒一も適当に働いていた。


その時。


「神谷くん」


女子が声を掛けてくる。


「この机運ぶの手伝ってくれない?」


「ああ」


恒一は立ち上がる。

普通のことだった。


だが少し離れた場所。

暁がその様子を見ていた。


「暁さん?」


クラスメイトが呼ぶ。


「どうしたの?」


「別に」


そう答える。

しかし視線は恒一の方へ向いていた。


女子と話している、笑っている。

それだけそれだけなのに何となく面白くなかった。


理由は分からない。


「……」


暁は少し考える。

やはり分からない。

すると彩音が隣に来た。


「どうしたの?」


「何でもない」


「神谷くん見てた?」


「見ていない」


嘘だった。

彩音は笑いを堪える。


「そっかー」


絶対信じていない顔だった。



その日の帰り道。

恒一と暁は並んで歩いていた。


「文化祭準備どうだった?」


恒一が聞く。


「普通だった」


「そうか」


しばらく歩く。

そして暁がぽつりと言う。


「今日話していたな」


「誰と?」


「女子」


恒一は少し考える。


「ああ、机運んだ時か」


「そうだ」


「別に普通だろ」


「そうか」


会話終了。

だが暁は少しだけ考え込む。


普通、確かに普通だ。

なのになぜ少し嫌だったのか。

やはり分からない。



家へ帰る。

夕飯を食べる。

食器を洗う。

いつもの日常。


そして夜、リビング。

恒一はテレビを見ていた。


暁は隣で本を読んでいる。

静かな時間。

不意に暁の肩が恒一へ寄る。


本当に自然だった。

本人も気付いていない。

恒一も気付いていない。

ただ居心地が良かった。


暁は本を読みながら思う。

今日一日色々考えた。

でも結局分かったことがある。

神谷恒一の隣が一番落ち着くそれだけは間違いなかった。

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