27話
翌日の放課後。
恒一はいつものように帰宅しようとしていた。
すると校門前で見慣れた二人が待っていた。
暁と紫苑である。
暁はいつも通り紫苑は何やら難しい顔をしていた。
「どうした」
恒一が聞く。
すると紫苑が口を開く。
「少し問題が起きました」
嫌な予感しかしない。
最近この手の話で平和だった試しがない。
「今度は何だ」
「協会が私を保護対象に指定しました」
「は?」
意味が分からない。
紫苑はため息を吐いた。
「雷牙が動き始めた影響です」
「私も白鬼様の関係者ですので狙われる可能性があります」
なるほど確かに理屈は分かる。
「で?」
「しばらく身を隠せと言われました」
「協会に行けばいいだろ」
「断りました」
即答だった。
「なんで」
「面倒なので」
暁と同じ理由だった。
類友かもしれない。
その時紫苑が真顔で言った。
「なので神谷家に泊まります」
「待て」
話が飛んだ。
かなり飛んだ。
結局、夕方。
神谷家、リビング。
恒一は頭を抱えていた。
目の前には紫苑。
隣には暁。
そして遊びに来ていた彩音。
なぜいるのかは誰も聞かなかった。
どうせ嗅ぎ付けたのだろう。
「面白くなってきましたね」
彩音が笑う。
「面白くない」
恒一が即答する。
紫苑は家の中を見回していた。
「ここが白鬼様の住まいですか」
「違う」
暁が言う。
「私の住まいではない」
「恒一の家だ」
なぜか少し誇らしげだった。
意味が分からない。
夕食。
四人で食べる。
紫苑は意外と普通だった。
礼儀正しい。
好き嫌いもない。
彩音よりずっとまともかもしれない。
「失礼ですね?」
「聞こえてたのか」
食後。
テレビを見る。
ゲームをする。
雑談する。
気付けば普通の友達の家みたいな空気になっていた。
そして問題の夜。
「部屋どうする?」
恒一が聞く。
神谷家はそこまで広くない。
客室なんてない。
「私はソファで構いません」
紫苑が言う。
「私が使うから駄目だ」
彩音が言う。
「帰れ」
「なんで!?」
結局。
彩音は帰された。
当然だった。
そして紫苑は客用布団。
暁は自分の部屋。
恒一は自分の部屋。
そう決まったはずだった。
夜十一時。
恒一はベッドに寝転がっていた。
ようやく静かになった。
そう思った時、コンコン。
ノック。
嫌な予感。
「開いてる」
ドアが開く。
暁だった。
予想通りである。
「どうした」
「眠れない」
最近多い。
「自分の部屋で寝ろ」
「寝ようとした」
「なら寝ろ」
「無理だった」
理不尽だった。
暁はそのまま部屋へ入ってくる。
そして当然のように床へ座った。
恒一はもう驚かなかった。
「紫苑は?」
「寝ている」
「そうか」
静かな時間が流れる。
しばらくしてまたノックが鳴った。
「今度は誰だ」
ドアが開く。
紫苑だった。
「……」
「……」
「……」
三人とも固まる。
紫苑が暁を見る。
暁も紫苑を見る。
数秒、沈黙。
「白鬼様」
「なんだ」
「なぜここに」
「眠れない」
「なるほど」
納得した。
するんだ。
だが次の瞬間。
紫苑が言った。
「でしたら私もここにいます」
「帰れ」
恒一が即答した。
結果。
なぜか三人で雑談することになった。
意味が分からない。
昔話をする紫苑。
それを聞く暁。
聞き流す恒一。
不思議な時間だった。
「そういえば」
紫苑が言う。
「昔の白鬼様は誰かと一緒にいることがほとんどありませんでした」
「そうなのか」
暁が聞く。
「はい」
紫苑は頷く。
「いつも一人でした」
そして少しだけ笑う。
「だから驚いています」
「何が」
「今の白鬼様です」
暁は考える。
そして恒一を見る。
「確かに」
「何がだよ」
「今は一人ではない」
あまりにも自然な言葉だった。
紫苑は少しだけ目を細める。
寂しそうなでも嬉しそうな顔。
四百年前、白鬼は孤独だった。
誰より強かったから。
誰より遠かったから。
誰も隣に立てなかった。
だが今は違う。
暁は知らないうちに変わっていた。
そしてその変化の中心にいるのが神谷恒一なのだと紫苑は改めて理解していた。
もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。




