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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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23/25

23話

翌日、昼休み。

神谷恒一はいつものように屋上へ向かっていた。


だが。


「白鬼様」


「なんだ」


「こちらの日陰の方が涼しいです」


「そうか」


「飲み物もあります」


「分かった」


暁の横には紫苑がいた。

完全にいた。

しかも距離が近い、かなり近い。


恒一は少し離れた場所へ座る。

すると。


「神谷くん」


彩音がやって来た。

ニヤニヤしている。


嫌な予感しかしない。


「何だ」


「拗ねてる?」


「拗ねてない」


即答。


「へぇー」


「何だよ」


「別に?」


絶対別にじゃなかった。

その頃、暁は紫苑の話を聞いていた。

正確には聞かされていた。


「昔、白鬼様は山一つ消し飛ばしたことがありまして」


「そうか」


「覚えてませんか?」


「覚えていない」


「ですよね……」


少し落ち込む。

だがまた話し始める。


「大変だな」


恒一が呟く。


「何が?」


彩音が聞く。


「紫苑」


「四百年分の話したいんだろ」


「あー」


確かにそれは大変そうだった。

だがその時だった。


「神谷」


暁が呼ぶ。


「ん?」


「こっちへ来い」


恒一は首を傾げる。

だが近付く。

すると当然のように隣を指差された。


「座れ」


「ここ?」


「そうだ」


紫苑が固まった。

彩音も固まった。

鬼塚が吹き出した。


「何で?」


恒一が聞く。


「そこが空いている」


「他も空いてるだろ」


「ここがいい」


即答だった。

恒一は座る。

すると暁は満足そうに頷いた。


紫苑が静かにショックを受けていた。



放課後、協会支部。

珍しく全員が呼ばれていた。

軽い報告会らしい。


会議が終わる。

帰ろうとした時だった。


「白鬼様」


紫苑が呼ぶ。


「なんだ」


「少しお時間を」


暁が頷こうとした瞬間。

恒一が立ち上がった。


「先帰るわ」


どうせ話したいことがあるのだろう。

そう思っただけだった。

しかし。


「待て」


暁が引き止めた。


「ん?」


「一緒に帰る」


「いや、紫苑と話あるんじゃ」


「後でいい」


紫苑が固まる。

彩音が吹き出しそうになっている。


「白鬼様」


「なんだ」


「私は後でも構いません」


声が少し震えていた。



帰り道。

恒一と暁。

いつもの二人。


「紫苑と話さなくて良かったのか」


恒一が聞く。


暁は少し考える。

そして。


「問題ない」


と答えた。

だが少し間を置いて。


「紫苑は最近近い」


と言った。


「近い?」


「近い」


意味が分からない。


「昔の知り合いなんだろ」


「そうだ」


「じゃあ別にいいじゃないか」


暁は黙った。

何となく納得していない顔だった。


夜、神谷家。

リビング。


暁はソファでスマホを見ていた。

最近覚えたらしい。

するとメッセージが届く。


送り主、霧島彩音。


『相談?』


いつの間に連絡先を交換したんだろう。

暁は少し考えた。

そして返信する。


『質問がある』


すぐ返事が来た。


『どうぞ!』


『紫苑が恒一に近付くと少し嫌だ』


数秒。

既読。


そして。


『それ嫉妬じゃん』


暁が固まった。


『違う』


即返信。


『前も似たことなかった?』


『あった』


『彩音は嫉妬だと言っていた』


『今回もそう』


『違う』


『何が違うの?』


そこで暁は止まる。

分からない。

だが嫌だった。


紫苑が恒一の近くにいるのが。

恒一が紫苑と話しているのが。


一緒に帰ると言われた時少し安心した。

理由は分からない。

本当に分からない。


『完全に嫉妬です』


彩音から最後の一文。


暁はスマホを見つめる。


数分。

そして。


『分からない』


そう返信した。



一方その頃、自室。

恒一はゲームをしていた。


そこへ。

コンコン。


「ん?」


ドアが開く。


暁だった。


「どうした」


「少し」


暁は考える。

そして。


「ここにいてもいいか」


と聞いた。

恒一は少し笑った。


「好きにしろ」


「そうする」


暁は恒一のベッドの横へ座る。

なぜ安心するのか。

なぜ落ち着くのか。

まだ分からない。


だが最近。

神谷恒一の隣が一番居心地が良かった。

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