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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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18/23

18話

夏祭りから三日後。

学校、昼休み。


神谷恒一は机に突っ伏していた。


「眠い……」


昨夜は暑くてなかなか寝られなかった。


「だらしないな」


鬼塚が言う。

今日は珍しく協会組が全員いる。

氷室。彩音、鬼塚。

そして暁。


「そういえば」


彩音が言う。


「最近また妖怪の動きが活発なんだって」


恒一が顔を上げる。


「またか」


「うん」


氷室の表情も険しい。


「九条が動き始めた可能性がある」


その名前が出た瞬間。

暁が少しだけ反応した。


「嫌いなやつ?」


彩音が聞く。


「嫌いだ」


即答だった。

全員が笑う。

しかしその数時間後。

笑っていられなくなる。



放課後。

授業終了直後。

突然、校舎全体が揺れた。


ドォォォン!!

窓ガラスが震える。

悲鳴が上がる。


「な、何!?」


「地震!?」


違う。

暁が立ち上がった。


「妖気」


空気が変わる。

氷室も即座に反応する。


「全員避難!」


次の瞬間。

校庭から轟音が響いた。


ドガァァァァン!!


校舎の窓が割れる。

生徒たちが悲鳴を上げる。

恒一たちは窓から外を見る。


そこには巨大な狐がいた。

黄金色の毛並み。

四メートルを超える巨体。

赤い瞳。

そして複数の尻尾。


「上級妖狐……!」


氷室が顔色を変える。

鬼塚も舌打ちした。


「冗談だろ」


妖怪が学校を襲う。

それ自体が異常だった。


そして妖狐が喋った。


『白鬼』


低い声。

校庭中に響く。


『迎えに来た』


静寂。

その言葉の意味を理解した者は少ない。

だが恒一たちは分かった。

目当ては暁だ。


「面倒だな」


暁が呟く。

そして窓から飛び降りた。


「おい!?」


恒一が叫ぶ。

三階だぞ。

だが普通に着地した。

今更だった。



校庭。

妖狐と暁が向かい合う。

周囲では協会の陰陽師たちが結界を展開していた。


「お前は誰だ」


暁が聞く。

妖狐は頭を下げる。


『九条様の配下』


『主はお前の帰還を望んでいる』


「断る」


即答だった。

妖狐が固まる。


「恒一がいる」


それだけだった。


校舎から見ていた彩音が頭を抱える。


「理由それだけ!?」


鬼塚が笑う。


「まあ暁らしいな」


妖狐は低く唸った。


『ならば力ずくで連れ戻す』


その瞬間、妖気が爆発した。

地面が砕ける。

窓ガラスが割れる。


強い。

今までの妖怪とは比較にならない。

だが暁は動じない。


白い刀を抜く。

静かに

そして。


「邪魔だ」


次の瞬間。

ドォォォォン!!


衝撃、妖狐が吹き飛んだ。

校庭を転がる。


全員が固まった。


「嘘だろ」


鬼塚が呟く。

上級妖狐。


協会でも討伐困難。

それが一撃だった。


妖狐が立ち上がる。

血を流している。

しかし笑っていた。


『やはりだ』


『主の言った通り』


「?」


『弱くなっている』


暁の眉が少しだけ動く。


『昔のお前なら』


『今の一撃で私は死んでいた』


静寂。

恒一は思う。

それでも十分強いだろ。


妖狐は笑った。


『覚えておけ』


『主は必ず来る』


『白鬼を迎えに』


そして最後に。


『お前は人間の隣にいていい存在ではない』


その言葉。

初めて暁の目が冷たくなった。


「黙れ」


次の瞬間。

妖狐は吹き飛ばされていた。


結界の外。

遥か彼方へ。


完全敗北だった。


戦闘終了。

生徒たちは避難。

協会が後処理。

校舎の被害確認。


大騒ぎだった。

その中、恒一は校庭の端に立つ暁のところへ向かう。


「終わったか」


「終わった」


いつもの声。

だが少しだけ疲れて見えた。


「大丈夫か?」


暁は少し考える。

そして珍しく素直に答えた。


「分からない」


記憶、過去、九条、白鬼。


色々なものが絡み始めている。

しかしその時、暁は小さく恒一の制服の裾を掴んだ。


ぎゅっ。


「ん?」


「少しだけ」


「?」


「このままでいい」


恒一は少し驚く。

だが何も言わなかった。


「そうか」


それだけ返す。

暁は小さく頷いた。

そしてほんの少しだけ安心したような顔を見せた。

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