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妖怪と契約させられた人間  作者: 東海林


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17/24

17話

梅雨が明けた。

暑い、とにかく暑い。


「暑い……」


神谷恒一は机に突っ伏していた。

教室のエアコンは頑張っている。

だが限界がある。


「夏だからな」


隣から暁の声。

相変わらず涼しそうだった。


「お前暑くないのか」


「少し」


全くそうは見えない。

そんな時、霧島彩音が近づいてきた。


「二人とも」


「ん?」


「今度の土曜日空いてる?」


嫌な予感がした。

彩音がこういう顔をしている時は大体ろくなことにならない。


結果。

夏祭りに行くことになった。

しかも彩音、氷室、鬼塚。

そして恒一と暁。


五人で。



土曜日、夕方。

祭り会場。


人が多い。

屋台、提灯、浴衣姿の人々。

典型的な夏祭りだった。


待ち合わせ場所。

先に来ていた恒一は思わず固まった。


「遅い」


暁だった。

浴衣姿。

白地に青い花柄。

銀髪とよく合っている。


「……」


恒一が黙る。


「どうした」


「いや」


暁は首を傾げる。


「似合ってるな」


恒一が言った。


数秒、沈黙。


「そうか」


それだけ。

だが耳が少し赤かった。


その直後。


「おおー!」


彩音登場。

浴衣姿。


元気いっぱい。


「暁さん綺麗!」


「ありがとう」


「神谷くん見惚れてた?」


「うるさい」


「見惚れてたんだ」


鬼塚が爆笑した。

氷室は見なかったことにしていた。


祭り開始。

最初は射的。


「これ取れたら勝ちな」


鬼塚が笑う。


十分後。


結果。

鬼塚惨敗。

彩音惨敗。

恒一普通。

氷室微妙。


そして暁。


パァン!!


パァン!!


パァン!!


景品全滅。


「おい」


恒一が言う。


「何だ」


「本気出すな」


店主も泣いていた。


次は金魚すくい。

彩音が頑張る、二匹。

恒一、三匹。

鬼塚、ゼロ。

そして暁。


「十五匹」


「だから本気出すな!!」


祭りを楽しむ才能がなかった。


その後。

屋台巡り、たこ焼き、焼きそば、りんご飴、かき氷。

暁は全部興味を示した。


「人間は祭りになると食べ過ぎるな」


「そういうイベントなんだよ」


「合理性がない」


と言いながら焼きそばを食べている。

説得力がなかった。


夜。

祭りは最高潮。


花火も近い。


しかし人が多すぎた。


「うわっ」


誰かにぶつかる。


気づけば恒一は人波に飲まれていた。


「あれ」


彩音たちが見えない。


まずい。


その時。

ぎゅっ。


誰かが手を握った。

振り向く。

暁だった。


「離れるな」


真剣な顔。


「……ああ」


手を握られたまま人混みを進む。

暁は前を見ている。

だが握る力が少し強かった。


まるで本当に離れたくないみたいに。


数分後。

彩音たちと合流。


「見つけたー!」


彩音が手を振る。

そして恒一と暁の手を見る。


「おお?」


鬼塚も見る。


「おお?」


氷室も見る。


「……」


何も言わない。

だが少し目を逸らした。


暁がようやく気づく。


手。

繋いでいる。


数秒、固まる。

そしてゆっくり離した。


「……」


耳が赤い。

彩音がニヤニヤしていた。


「何だ」


暁が聞く。


「いやー?」


「何だ」


「別にー?」


絶対別にじゃなかった。


その後、花火が始まる。

夜空に大輪の花。


五人で見上げる。

綺麗だった。

そして誰も気づかなかった。


祭り会場の遠く。

高い建物の上。

九条が静かに花火を見ていたことに。


「楽しそうだな」


その隣には新たな妖狐が立っていた。


「主」


「準備は?」


九条が聞く。


妖狐は頭を下げる。


「完了しております」


九条は笑った。


「なら始めるか」


その赤い瞳は祭りではなく、暁を見つめていた。

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