表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された未来を見通す才女は、貴族至上主義の国を根元から再構築する  作者: しばゎんゎん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/12

第9話:選び続ける者

夜の王城は、静かだった。


昼の喧騒が嘘のように、すべてが落ち着いている。


書類に目を落とす。


数字は安定している。


財政、流通、治安。


どれもが正常の範囲に収まっている。


「一つの区切り、ですね」


誰にともなく呟く。


三年前。王城での出来事。


あの日、すべてが始まった。


婚約破棄。


断罪。


見切り。


そして、選択。


再生は不可能。


壊すと決めた。


変えると決めた。


その結果が、今ここにある。


だが、これで終わりではない


安定は、完成ではない。


維持し続けなければ、意味がない。


窓辺へ歩く。


外には、王都の夜景。


灯りが並び、人が暮らしている。


その一つ一つが、この国だ。


改革前、街の活気は失われていた。


民衆は抑圧され、静かに暮らしていた。


だが、今は違う。


あの日よりは、確実に。


前に進んでいる。


街は活気にあふれている。


「ユーア」


背後からの声に振り返る。


レオンが立っている。


「まだ仕事か」


「ええ」


短く答える。


「お前らしいな」


苦笑が混じる。


「そちらは?」


「同じだ」


しばしの沈黙。


それが、心地よい。


「三年だ」


彼が呟く。


「長かったな」


「短かった、とも言えます」


「どちらだ?」


一瞬だけ考える。


「必要な時間でした」


そう答える。


彼は小さく笑った。


「お前らしい答えだ」


窓の外を、二人で見る。


「これからどうする」


問い。


だが、それは確認に近い。


「続けます」


迷いなく答える。


「この国が、再び同じ過ちを繰り返さないように」


構造は整えた。


だが、人は、同じことを繰り返す。


「見続け、修正し続ける必要があります」


「終わりはないな」


「ええ」


それが、頂点に立つということ。


「後悔はないか」


三年前にも、聞かれた問い。


 私は、静かに首を振る。


「ありません」


「ですが、軽くはありません」


その重さは、消えない。


切り捨てたもの、守れなかったもの。


すべて、覚えている。


「それでいい」


レオンが言う。


「忘れるな」


「はい」


忘れない。


だから、進める。


彼は一歩、近づく。


「なら、これからも共に行こう」


差し出される手。


三年前と同じようでいて。


まったく違う意味を持つ。


私は、その手を見る。


そして、静かに、握る。


「ええ」


短く、しかし確かに答える。


これは依存ではなく、選択だ。


互いに、選び続けるという意思。


夜風が、静かに吹く。


遠くで、朝の鐘が鳴る。


新しい一日の始まりを告げる音。


「行きましょう」


私は前を見る。


過去ではなく、未来へ進む。


この国が、どこまで行けるのか。


それを決めるのは


血でも、運命でもなく、選択だ。


二人並んで、歩き出す。


終わりではない。ここから先も、続いていく。


選び続ける限り。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ