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婚約破棄された未来を見通す才女は、貴族至上主義の国を根元から再構築する  作者: しばゎんゎん


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第8話 三年の証明とこの国の在り方

一年目:止血と選別


最初の一年は、戦い。


敵は外ではなく、内部。


「価格が上がりすぎだ!民が持たない!」


会議室で声が飛ぶ。


「市場はまだ安定していません」


私は即答する。


「だが、供給網は維持しています。最低限の生活は保証されている」


「最低限では不満が出る!」


「不満は当然です」


視線を逸らさずに言う。


「だが、暴動は起きていません」


事実。


なぜか。


「価格統制ではなく、選択的補助だからです」


必要な者にだけ、届く仕組み。それが機能している。


一方で。


「拒否する」


ある侯爵が、冷たく言い放った。


「我が家は、そのような制度には従わぬ」


旧来の特権にしがみつく者。


予想通り。


「承知いたしました」


私は頷く。


「では、契約に基づき資産の整理を」


「何だと!」


「担保はすでに押さえております」


逃げ道はない。


数ヶ月後。


その侯爵家は、破産し、静かに消えた。


そして、同じように抵抗を図った複数の貴族家が表舞台から姿を消していった。


「容赦がないな」


レオンが呟く。


「必要な処置です」


「迷いはないのか」


一瞬だけ、考える。


「あります」


正直に答える。


「ですが、優先順位は明確です」


国か、個か。


「今回は、国を取りました」


年の終わり。


報告書には、こう記されていた。

 ・財政赤字、半減

 ・流通安定化達成

 ・反乱件数、ゼロ


そして、

 ・貴族の三割、淘汰完了



■二年目:構築と浸透


二年目は、作る年。


「官吏登用試験、開始します」


王都に、新しい制度が導入される。


身分不問。


能力で選ぶ。


「本当に平民を登用するのか。どうせ、貴族様のパフォーマンスだろう」


信用ならない、形だけのもの。


多くの人がそう思っている。


当然だ。


「試験は公開形式で行います」


私は告げる。


「評価基準も、すべて開示します。不正は許しません」


不正は許さない。


構造で縛る。


結果。


「合格者、三十名」


そのうち、平民出身は11名、下級貴族出身6名。


これまで、登用されることのなかった者たちや、出世からは程遠かった者たちが過半を占める。


これまでであれば、無視されていた者たち。


だが、今回は異なる。正当な、評価。


「貴族が平民に劣るなど、あり得ぬ」


「だが、成績は明らかだ」


貴族たちは言葉を失う。


さらに。


「地方行政の再編、完了しました」


腐敗していた地方に、新たな人材が入る。


各貴族家に任せていた地方行政に中央集権制度を持ち込み、優秀な人材を立て直しが必要な地方に送り込む。


「税収が増えている?」


「適切な人員が配置され、横領が減ったためです」


単純な話。


「こんなに変わるものなのか」


「今までが、非効率だっただけです」


一方で。


「我々の立場はどうなる!」


残った貴族の不満も爆発する。


「役割はあります」


私は静かに言う。


「ただし、責任を伴う役割です。貴族であれ平民であれ、それぞれが果たすべき役割を果たす。それだけです」


肩書きではなく、機能。


年の終わり。


報告書はこう変わる。

 ・財政黒字化目前

 ・地方統治の安定

 ・新規登用人材、定着率九割


そして、民の間に、変化が生まれる。


「最近、少し暮らしやすくなったな」


「役人の対応も変わった」


小さな声。


だが確実に広がる。



■三年目:統合と証明


三年目は証明の年。


「帝国の査察団が到着します」


報告が入る。


「予定通りです」


私は頷く。


王都に現れたのは、厳しい視線を持つ帝国の調査官たち。


数字を見る。


現場を見る。


人を見る。


「不正の兆候は?」


「確認できません」


「財政指標は?」


「基準を上回っています」


「治安は?」


「安定。犯罪率は低下しております」


報告が、積み上がっていく。


そして最後に。


「評価を申し渡す」


代表者が口を開く。


静寂。


「レグルス王国は、統治能力を回復したと認める」


その瞬間、空気が、変わった。


「よって」


一拍。


「併合は見送り」


ざわめきが起こる。


だが、それは、恐れではない。


この三年間への安堵と、誇り。


「高度な自治を認め、条約の改正を行う」


「そして、レオン・レグルス。貴殿がレグルス王国の正統なる国王に即位することを、アルデバラン帝国皇帝の名のもとに認める」


決定。


完全な、証明。


旧国王から、新国王へ。


旧態然とした体制と完全に決別し、実力主義に、新たなるステージへ。


レグルス王国は歩みを止めない。



3ヶ月後


査察団が帝国に帰国し、代わりに特使がやってきた。


条約を改定するために。


新条約への調印を無事終え、王城のバルコニーから、街を見下ろす。


「やり切ったな」


レオンが言う。


「いえ、まだ途中です」


私は答える。


街には活気がある。


市場は賑わい、人が行き交う。


かつての停滞は、もうない。


「三年前とは、別の国だ」


「ええ、大きく変わりました」


頷く。


「壊して、作り直しましたから」


静かな風が吹く。


「後悔はないか」


一瞬だけ、考える。


「ありません」


答える。


「ただし」


「責任は残り続けます」


頂点に立つ者としての。


「終わりはない、か」


「ええ、立ち止まることは退化につながります。常に前に進んでいかなければなりません」


それでも。 


この国は、立っている。


血統ではなく、機能で。


感情ではなく、構造で。


「これが、答えです」


誰に向けるでもなく、そう告げる。


かつて、断罪されたあの日から。


すべては、ここへ繋がっていた。

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