表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された未来を見通す才女は、貴族至上主義の国を根元から再構築する  作者: しばゎんゎん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/12

第11話 外伝② 伯爵令嬢

かつて、自分は選ばれる側だと、信じていた。


王都の片隅。


華やかな中心から外れた通りに、小さな屋敷がある。


かつて新興伯爵家と呼ばれた家の、現在の住まい。


「どうして、こうなったのよ」


鏡の前で、女は呟いた。


かつて王太子の隣に立っていた少女。


愛らしさで人を惹きつけ、甘い声で心を絡め取った女。


今も、顔立ちは整っている。


だが、そこにあるのは、余裕ではなく焦り。


「お父様は?」


「本日は、出資者との会談に」


「また?」


苛立ちが滲む。


家は、まだある。


だが、内情は火の車。


王太子の失脚と同時に、後ろ盾を失った。


さらに、改革により資金の流れが変わり、無理な拡張のツケが一気に回ってきた。


「あの時は、完璧だったはずなのに」


王太子に取り入り、婚約者を排除し、自分がその位置に立つ。すべて計算通りだった。


だが、計算は狂った。


理由は、分かっている。


「あの女、ユーア」


自然と名前が浮かぶ。


地味で、目立たなくて、面白みのない女。


そう思っていた。


だが、あの女は、選ばれる側ではなく、選ぶ側だった。


「最初から、違ったのね。敗北は決まっていた」


可愛い。庇護欲をそそる。


だが、それは誰かに選ばれなければ、価値が成立しない。


王太子に。貴族に。社会に。


その選ぶ側が崩れた時、共に崩れる。


静かな現実。


扉がノックされる。


「お嬢様、お客様が」


「誰?」


「申し訳ありません。以前お断りした商会の方で」


言葉が詰まる。


分かっている。金の話だ。


私を妻として迎えれば、支援を行う。


「会わない」


即答する。


「ですが」


「会わないって言ってるでしょ!」


苛立ちが爆発する。


扉の向こうで、気まずい沈黙。


「承知いたしましたいた」


去っていく気配。


静寂が戻る。


分かっている。このままでは、いずれ、もっと落ちる。


「そんなの嫌」


小さく呟く。


だが、どうすればいいのか、分からない。


今まで考えたことがなかった。


どうやって上に行くかだけ考えていた。


だが、どうやって立ち続けるかは、考えていなかった。


「どうすれば」


答えは、見つからない。


ふと、あの婚約破棄の夜を思い出す


あの女は、何も失っていない顔をしていた。


むしろ、何かを得たような顔をしていた。


同じ場にいたのに、同じように見えたのに。


どうして、あそこまで違うのか分からない。


それが、すべてだった。


理解できない。


窓の外を見る。


遠くに見える王城。本来なら私がいるはずの場所。


そのさらに先には、変わっていく街。


どちらも、もう、自分の場所ではない。


手を伸ばしても、届かない。


そして、その距離を埋める方法も、知らない。


かつて選ばれていた女。


今は、誰にも選ばれない場所で。


何もできずに時間だけが、過ぎていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ