表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空白に触れる  作者: 世華
7/7

7.朝の音

夜は、いつもより静かだった。


 部屋の灯りを消しても、暗さが濃くならない。


 紬は椅子に座っている。


 胸の奥は、静かだ。


 何かを思い出そうとする。


 母の匂い。

 笑い声。

 誰かに呼ばれた声。


 どれも、形にならない。


 指先だけが、あたたかい。


 触れたときの感触が、まだ残っている。


 それが、自分のものかどうかは分からない。



 朝になる。


 目覚ましの音が鳴る前に目が覚める。


 止める。


 台所で湯を沸かす。


 マグカップは一つ。


 湯気が上がる。


 紬はそれを見ている。


 何も浮かばない。


 でも、空ではない。



 古書店の扉を開ける。


 鈴が鳴る。


 いつもと同じ音。


 棚に光が落ちる。


 紙の匂い。


 紬はレジに立つ。


 しばらくして、扉が開く。


 鈴が鳴る。


 紬は顔を上げる。


 言葉は用意していない。


 それでも、口は動く。


 「どうされましたか」


 声は、静かだった。


 指先に、わずかな体温が残っている。


 それだけで、立っていられた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ