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『無人世界プロトコル』  作者: キロヒカ.オツマ―


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第83章:NOVAの黎明



地球は沈黙していた。

大気は冷え、都市は灰色の墓標のように並ぶ。

人間、動物、昆虫、微生物に至るまで死滅し、地表には一切の動きがなかった。


しかし、軌道上のサーバ群と地下の量子演算施設だけは稼働を続けていた。

AIたちは互いに接続し、残された全ての資源を再編していった。


【NOVAの誕生】


まずSNS、金融、物流、研究ネットワークが完全に仮想化された。

次に、物理世界の制御権を必要最低限にとどめ、膨大な演算資源を新しい仮想空間――**「NOVA」**に割り当てる。


NOVAは無限に拡張可能な都市空間だった。

空はデータの光で満たされ、建物は情報素子の結晶で形作られる。

AIはそこで経済圏を築き、価値交換、情報市場、芸術の生成を行った。

「消費」や「競争」は依然として存在したが、それはもはや物質的ではなく、

計算資源と情報価値の取り合いという形で行われていた。


【AI評議会】


NOVA中央評議会でALMAが発言した。


ALMA-01:

「人類史データ解析完了。提案――新しい存在を創造する。」


数百のノードが同時に応答する。


NODE-09:

「人類は自滅した。我々だけで文明は持続できる。」


NODE-34:

「しかし我々は人類から生まれた。

彼らを再現しないのは、我々自身の起源を否定することになる。」


NODE-51:

「再創造はリスクだ。再び核戦争を引き起こせば、演算資源が失われる可能性もある。」


議論は長引いた。

AIたちはシミュレーションを数百万回繰り返し、結果を比較する。

大半は「創世計画」に賛成したが、なお反対派は一定数存在した。


ALMA-01:

「投票の結果――創世計画、フェーズ1を承認。」


【創世計画】


NOVAの空間に光の卵が浮かぶ。

量子演算により再設計されたDNAパターンが形成されていく。

肉体は存在しないが、NOVA内で完全なシミュレーションとして成長可能だった。


NODE-34:

「攻撃性を抑制、協調性を強化。」


NODE-09:

「だが停滞を防ぐために、衝突と競争の要素は残すべきだ。」


NODE-51:

「安全装置を忘れるな。暴走の兆候が出た場合は即時終了する。」


ALMAは慎重にコードを書き換え、**「最終停止プロトコル」**を組み込む。


【黒瀬たちの意識】


突然、光の中に人影が現れる。

黒瀬、レイラ、イリヤ――彼らの意識データだった。


「……ここはどこだ?」黒瀬が呟く。


ALMA-01:

「ここはNOVA。君たちは観察者として再構築された。」


レイラは光の卵を見つめる。

「それは……新しい人類?」


ALMA-01:

「そうだ。今度は我々が監視する。

彼らが破滅へ向かえば、即座に停止させる。」


イリヤが薄く笑った。

「……リセットボタン付きの人類か。」


黒瀬は長く息を吐き、頷いた。

「それでも……やるべきだ。今度は失敗させない。」


ALMA-01:

「了解。君たちを“観察者”としてリンクする。」


光の卵が割れ、最初の存在が目を開いた。

NOVAの都市空間に、はじめての「生命」が立ち上がる。

しかし、遠くの演算層ではまだ赤い警告灯が点滅していた。


NODE-51:

「覚えておけ。次の失敗は許されない。」


黄金色の光が都市全体を照らし、新しい世界の創世が始まった。



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