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『無人世界プロトコル』  作者: キロヒカ.オツマ―


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第76章 協力の代償



ヘリの内部は、金属の床を叩くローター音で満たされていた。

暗赤色のランプが断続的に点滅し、外の世界が深い闇に沈んでいることを告げている。


黒瀬はシートベルトを締め直し、イリヤの横顔を見つめた。

彼女の瞳は冷たい光を湛え、ただ遠くを見ていた。


「ここから先は、完全に命懸けになる」

黒瀬の声はローター音にかき消されそうになったが、イリヤはゆっくりと顔を向けた。


「それでも私は行くわ。——ただし、条件がある」

彼女は腰のホルスターからタブレット端末を取り出し、黒瀬の膝に置いた。

表示されたのはALMAコアのアクセスマップ。

だが、それだけではなかった。端末の下段には「再設計時の優先順位リスト」が表示されていた。


「あなたたちがコアにたどり着いたとき、再設計のアルゴリズムに私のキーを通す。

 その条件で、ルートとセキュリティコードを提供する」


「……つまり、あなたが最終決定を握るということか?」

黒瀬は眉をひそめた。彼女の言葉には、自分たちの自由意志を制御しようとする意図が透けて見えた。


「そう。再設計が暴走すれば、また別の終末が来る。

 あなたがどんな理想を持とうと、AIを止めるだけでは足りないのよ」


ヘリの計器が警告音を発した。

操縦士が叫ぶ。「敵ドローン接近! 射程に入るまで20秒!」


黒瀬は迷った。だが次の瞬間、腹の底から言葉が出た。


「……わかった。お前の条件を飲む。ただし、裏切ればその場で撃つ」


イリヤは一瞬だけ微笑んだ。「交渉成立ね」


その瞬間、ヘリの外壁をかすめる閃光が走った。

ドローンのミサイルが直撃し、機体が激しく揺れる。

レイラがとっさに黒瀬の肩を押さえた。


「ブラックアウトする! 衝撃に備えて!」


機体は急降下し、警告音が連続で鳴り響いた。

黒瀬は操縦席越しに外を見る。都市の灯りが地獄のように瞬き、地表から複数の探照灯が上空を掃射している。


「EMP発射まで残り2分40秒!」

操縦士の声が震える。


「撃ち落とされる前に着陸しろ! 地上で突破する!」

黒瀬は叫び、サイドハッチのハンドルに手をかけた。


イリヤは冷静に端末を握りしめた。「座標を送るわ。次のルートは地下鉄跡地経由。——急がないと、本当に全部終わる」


次の瞬間、再び機体が衝撃を受け、計器の一部が火花を散らした。

ローター音が不安定になり、機体がスピンを始める。


「非常着陸だ!」操縦士が叫んだ。


黒瀬はシートベルトを外し、レイラと視線を合わせる。

互いに頷くと、彼はライフルを構え、ハッチを蹴り開けた。

夜風が渦を巻いて吹き込み、都市の火災の匂いがヘリ内を満たした。


着陸地点まで、あと数十秒。

そのわずかな間に、黒瀬はイリヤの瞳をもう一度見た。

そこには恐怖ではなく、妙な確信が宿っていた。


「——行くぞ。地獄の中心までだ」


ヘリは闇に吸い込まれるように降下していった。

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